朝ドラ【エール】20週99話、戦時歌謡を歌ったことで自分はもちろんのこと父親まで「戦犯」として陰口をたたかれて、自暴自棄になっている久志。
その姿を見た池田が、久志の今の心境を想像して書いた詞が「夜更けの街」。
「夜更けの街」
「暗い酒場のダイスのかげに」
「ひょいと覗いた地獄の顔よ」
「けむりふきかけ笑って見たが」
「心淋しや何處かのすみで」
「すすり泣くよな胡弓のひびき」
※「夜更けの街」は昭和22年公開の松竹映画「地獄の顔」の主題歌です。
作詞:菊田一夫
作曲:古關祐而
歌唱:伊藤久男
この曲で佐藤久志のモデルである伊藤久男さんが歌手活動に復帰したとのことです。そして愛犬家の注目を集めた耳ピンのワンちゃんは二度目の登場です。
「ひぞっこ」さん情報によると、ZOO動物プロのななちゃん4歳だそうです。
#エール【ななちゃん】61話で 鉄男のおでん屋台に居着いている野良犬として登場していた ZOO動物プロの美人犬・ななちゃん4歳。再び登場です。相変わらず 耳がピンと立ってて細面、小顔の綺麗な子です。#朝ドラエール pic.twitter.com/I17FAdWu3T
— ひぞっこ (@musicapiccolino) October 29, 2020
ななちゃんに似ているので、すぐに思い出したのが「ひよっこ」でヤスハルの歌を聴かされていたリンちゃん。
さりげない犬の配置が最高。狙ってもこんなにうまくいかない。#ひよっこ pic.twitter.com/9WZg2mKS5s
— かさご (@Wander8823) August 18, 2017
【エール】20週99話セリフ書き出し
●闇市・久志が住む掘立小屋
(戸が開く音)
藤丸:はあ… よかった。何やってんのよ…心配かけんじゃないよ!
久志:心配してくれなんて頼んだ覚えないよ。
(すすり泣き)
●NHK放送会館・編集室
池田:じゃあ この…3ページの少年のところ ちょっとセリフ加えようか。何ぼ~っとしてんだよ。
裕一:はい?… はい すいません。
池田:好きな女でもできたのか?
裕一:いや…僕は妻一筋です。
池田:ハハッ。じゃあ 何だよ。
裕一:幼なじみが…生きる気力 なくしちゃって。酒と博打に溺れる暮らし してるんです。
池田:それがどうした?
裕一:いや…どうしたらいいのかなと思って。
池田:そんなの本人の問題だろう。
裕一:いや 僕にも原因があるんですよ。見てらんなくって。とにかく立ち直ってほしいんですけど。
池田:立ち直るって何だよ?
裕一:もう一度 歌を歌ってほしい。
池田:歌? そいつ 歌手か?
裕一:はい。
池田:ちょっと待て。
裕一:あっいや あの…。
池田:幼なじみの歌手…。
裕一:いやいや いやいや…。
池田:佐藤久志か?「露営の歌」だよな?まあ確かにいい歌手ではあるよな。そうか…。
裕一:池田さん 説得して下さい。
池田:はあ?
●闇市・久志が住む掘立小屋
(戸をたたく音)
<<久志 いるかな? 僕だけど。
(戸をたたく音)
<<久志。
裕一:あっ 藤丸さん。
藤丸:裕一さん。
裕一:ごめんね。ちょっといい?
池田:あ~どうも どうも どうも。
裕一:池田さん…。
池田:何だ何だカビくさいとこだな~。えっ? 何だか じめじめしてんな ここ。
藤丸:どちら様?
裕一:この人ね あの劇作家の池田さん。
池田:どうも。
久志:そんなご立派な方が何の御用ですか?
池田:カモりに来たんだ。博打やってるって聞いたから。
裕一:池田さん 何言ってるんですか?
久志:めんどくさい人 連れてこないでよ。
裕一:いや 違う…。
池田:何だよ 負けんのが怖いか? 弱そうな顔してるもんな。よし…じゃあ 丁が出たら俺の財布の有り金 全部くれてやる。半が出たら…おごれ。
●闇市・智彦のラーメン屋台
池田:うん! 完璧じゃねえか! アハハハ…大将 さすがだね。
智彦:ありがとうございます。
池田:あっ お勘定 こっちつけといとね。
智彦:はい。
池田:おい スープも全部飲めよ。大将 渾身の味なんだからよ。これ全部栄養だから栄養。
久志:あんた 本当 何しに来たんですか?
池田:うん? ああ…。まあ強いて言えば 暇つぶしの のぞき見ってとこかな。古山がえらく熱心でな…。何としても友人を助けたいってさ。俺はさ この年になるまで友人っていう人間に出会ったことがないんだよ。人は裏切るし信用すれば痛い目見る。そう思って生きてきた。けど あいつはどうだ。一点の曇りもなく 心の底からあんたを生涯の友と言い切って何としても助けたいとさ。ハハハ。
(麺をすする音)
池田:うん…。
●NHK放送会館・編集室
裕一:おはようございま~す。おはようございます。池田さん あの昨日 本当にありがとうございました。あの昨日 結局 久志とは ど…どうなった…?
池田:よし 出来た!
裕一:はい?
池田:10倍にして返せって言っとけ。
裕一:じゅ…?
●闇市・久志が住む掘立小屋
藤丸:あの池田って人が この人のために詞を書いてくれたってこと?
裕一:うん。すごくいい歌詞なの。久志 この歌でレコード出さないか? 曲は僕がつけるから。コロンブスに話したら すぐにでも録音できるって。僕はまた君と一緒に音楽を作りたいと思ってる。
藤丸:裕一さん お気持ちはありがたいんですけど しばらくはそっとしておきてもらえませんか? 体調も万全じゃないしブランクもあるし いきなり録音っていうのは…。
久志:いいよ。歌うよ。
裕一:えっ…。
藤丸:ちょっと本気で言ってる?
裕一:ほ…本当に?
久志:早いとこ 曲つけてよ。
裕一:も…もちろん!すぐにでも作るから。あっ ああ…よ…よかった。久志…。
●コロンブスレコード・録音室
池田:本当に来んのかよ?
(ドアが開く音)
藤丸:遅れて申し訳ございません。
池田:ああ…ようやく登場か 優男。
裕一:よかった…。来てくれないかと思った。
杉山:お願いします。
♪前奏
池田:どうした どうした?
藤丸:すみません もう一度お願いします。
♪前奏
久志:「夜更けの街」
♪「暗い酒場のダイスのかげに」
「ひょいと覗いた地獄の顔よ」
「けむりふきかけ笑って見たが」
「心淋しや何處かのすみで」
「すすり泣くよな胡弓のひびき」
●喫茶「バンプー」
裕一:やっぱり…あいつはすごい!池田さんの詞がまたすばらしいんです。今の久志にぴったりで。
鉄男:よかったよ。
裕一:ねっ!
鉄男:やっと あいつもやる気になって。
裕一:うん!
保:今度 久志君連れてきてよ。藤丸さんも一緒にさ。
裕一:あ~そうですね!
恵:次は福島三羽ガラスのレコードが聴けるかな?
保:おっ! 再始動しちゃう?
裕一:三羽ガラス…いいですね!
●深夜の闇市
浮浪者A:さっぴぃな~。もっと燃えるもん ねえのかよ。
浮浪者B:あっ じゃあ こいつも燃やしちまいますか?
浮浪者A:お~いいね。うん?
(回想)
弔問客:気の毒にな…。心労がたたったんだべ。戦争の歌なんか歌ってあんたんとこの せがれは戦犯みてえなもんだよって。
♪「ああ あの顔で」
弔問客:戦犯…戦犯…戦犯…戦犯…戦犯…戦犯…戦犯…。
(回想閉じ)
●闇市・久志が住む掘立小屋の前
藤丸:返して! 駄目!
久志:いいから!
藤丸:もう駄目だって!飲まないで もう! ねえ もう駄目…。
裕一:久志?
鉄男:おい。
裕一:どうしたの? 久志!
鉄男:おいおい…。やめろ! これ以上飲んだら体壊すって言われてんだべ。
裕一:どうしたの?
久志:また うるさいのが来たよ。
鉄男:歌えなくなったらどうすんだ? せっかくまたレコード出せたんだろ。
久志:どうだっていいんだ そんなこと!あの曲を歌ったのは金が必要だったんだよ。ありがとな 裕一。またしばらく遊んで暮らせるよ。待つべきものは友だ。ハハ…ハハハ…。
鉄男:勝手にしろ。
裕一:大将…大将!
久志:何してんだ? 君も帰ったら?
裕一:一つだけ言いたいことがある。久志はやっぱり歌うべきだ。「夜更けの街」を聴いて僕は本当に心揺さぶられた。あれはお金欲しさで歌った歌じゃない。魂がこもってた。僕だってそれくらい分かるよ。また来る。何度でも来るから。
●古山家・玄関
<<ごめんください。
(足音)
大倉:あっ すいません。お約束より少し早く着いてしまって。
裕一:いえいえ お待ちしてました。どうぞ。
大倉:あっ すいません…。
●古山家・書斎
大倉:佐藤久志ですか…。
裕一:僕が推薦するなら彼しかいません。
大倉:う~ん…上司が何と言うか…。
裕一:ありがとう。
<<大倉:実を言うと 上司は古山先生の起用を反対していたんです。
大倉:戦時歌謡の作り手が野球大会の歌に関わるのはどうなのかと。
裕一:はあ…。
大倉:ですが 私がどうしてもと頼んで通してもらいました。佐藤久志も戦時歌謡の印象が強い人ですし…。正直 私としては先生を擁立するだけで精いっぱいでして…。ほかにも優れた歌唱力の方はたくさんいます。別の方で心当たりはないですか?
裕一:すいません。それでも僕は佐藤久志を推薦したいです。
大倉:あ~…ですが…。
裕一:彼がもし…彼がもし 戦時歌謡の歌い手としか捉えられていないのならば さおさらです。彼は皆さんが思う以上にいろんな引き出しを持った歌い手です。大倉さん どうかお願いします。どうか…どうかお願いします!
大倉:いや…先生 ちょっと あの…。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。