【エール】セリフ書き出し16週80話|昭和十八年、裕一に召集令状、音は非国民

朝ドラ【エール】16週80話、鉄男が木枯を連れて古山家を訪問。そこで「お前の音楽は軟弱だ。もっと世の中の空気に合わせろ」と言われて創作意欲が衰えていると嘆く木枯。

鉄男も「俺も正直 今の音楽業界には違和感がある。戦意高揚 忠君愛国 そればっかしじゃつまんねえし やりがいもねえと思ってな…だから一旦 作詞から離れてみることにしたんだ」。

一方、音も音楽挺身隊で神林康子から非国民と言われ意気消沈。戦争の今、やれることをやるしかないのではないかと話す裕一だったが、役場の人が召集令状を…、という展開で来週につづくです。

長い目で見ると、人を「非国民」呼ばわりする人ほど「非国民」なんだと思い、難しい役を演じる円城寺あやさんに拍手です。

そして参考までに召集令状を書き起こしてみました。

充員召集令状

東京市世田谷区新屋町一丁目六一

補充兵役 古山裕一

右充員召集ヲ令セラル 左記ニ依リ 参著スベシ

到着年月日時 昭和十八年五月廿日午前八時

到着地 横須賀海軍

横須賀海軍人事部(印鑑)

【エール】16週80話のセリフ書き出し

●音楽挺身隊

潔子:合唱?

音:うん 慰問先の方々も一緒に歌ったら楽しいんじゃないかなと思って。

蓮沼:いいかもしれません。戦意高揚のためにも。

潔子:そういえば 音さん 歌を教えてたって言ってたもんね。

音:うん。

蓮沼:じゃあ 古山さん 選曲して下さる?

音:はい!

●古山家・玄関

裕一:ただいま。

●古山家・中庭

<ただいま~。

裕一:ただいま!

音:わっ! あ~お帰りなさい。

裕一:ハハハ…。

音:ごめんなさい。気が付かくなくて。

裕一:ううん 全然。

音:すぐ ごはんの用意するね。

裕一:うん。

●古山家・居間

音:ドイツ語だと難しいし…。やっぱり日本語の曲の方がいいかな…。

華:お母さん。

音:うん?

華:おやすみ。

音:あ~おやすみなさい。ドイツ…。

●古山家・華の部屋

華:お母さんって マグロみたいだよね。

裕一:マグロ?

華:うん。マグロって寝てる時も止まらないでず~っと泳いでんだって。

裕一:確かに。お母さんがじっとしてるとこ 見たことないかも。ず~っと動いてる。

華:うん。

裕一:うわ~っ…。

華:うわ~って。

裕一:ハハハ。

●古山家・居間

裕一:華 寝たよ。

音:あっ ごめんなさい。ありがとう。挺身隊の合唱の選曲を任されたんだけど 難しいね。
裕一:お茶いれようか。一息ついたら?

<<ごめんください。

裕一:大将かな?

●古山家・玄関

裕一:おお どうした?

鉄男:悪いな こんな時間に。

裕一:ううん。

鉄男:おでん屋やってた頃 買っといた酒が出てきたから 誰かと飲みてえと思って。

裕一:おっ!

音:いいんですか? 裕一さん お酒弱いですけど。

鉄男:大丈夫。ザルみてえな人も連れてきたから。

木枯:久しぶり。

裕一:木枯君!

●古山家・書斎

鉄男:いや~木枯さんの曲は名曲! 全部名曲だから!

裕一:「酒は涙か溜息か」いや… これが一番かな~。でもね「丘を越えて」も捨て難い!
鉄男:だから言ってっぺ 全部名曲だって。

裕一:ハハハハハ。

木枯:今はさっぱりだけどな。全然書いてないし。

裕一:何で?

木枯:書いても通らないんだよ。「お前の音楽は軟弱だ。もっと世の中の空気に合わせろ」だってさ。

裕一:ふ~ん…。

木枯:でも俺 そういうのって無理だし。

鉄男:いや~もう それで正解。木枯さんの個性 無理に曲げる必要なんてないんですよ。
裕一:うん そうだね! その方がね 木枯君らしいよ。

木枯:ありがとう。

鉄男:俺も正直 今の音楽業界には違和感がある。戦意高揚 忠君愛国 そればっかしじゃつまんねえし やりがいもねえと思ってな…だから一旦 作詞から離れてみることにしたんだ。

裕一:だから新聞社行ったんだ。

鉄男:うん。

木枯:裕一は大したもんだよ。

裕一:うん?

木枯:求められてる音楽を質を落とすことなく次々に生み出してる。

裕一:いや…僕はね ただお国のために頑張ってる人を応援したいだけ。それが今の僕にできるたった一つのことだからね。

木枯:真面目だね。

(笑い声)

(いびき)

木枯:頑張れよ。

●古山家・居間

音:できた! あっ…ごめんなさい。

木枯:2人とも寝ちゃいました。

音:ああ…随分飲んだんですね。お布団出さなきゃ。木枯さんも泊まっていかれます?

木枯:ああ…いや ちょっと これが待ってるんで。

音:あっ…フフッ…。

●古山家・玄関先

木枯:変わんないですね 裕一は。まっすぐで純粋で。

音:フフフ。

木枯:利用されなきゃいいけど。

音:うん?

木枯:あっ いや…お邪魔しました。

音:あっ お気を付けて。

木枯:それじゃあ。

●喫茶「竹」

鉄男:これは…。

保:うどんかん。寒天の中に うどん入れてみたの。

華:怖い…。

保:やっぱり駄目か…。

音:また新しいの期待してます。

保:いや…実はこの店 一旦閉めることにしたんだ。

恵:この人ね 近くの工場で働くことになったの。勤労動員で。

音:そうなんですね。

保:こんな状態で店続けるのもしんどいなって思い始めてたんだよね。代用コーヒーなんてコーヒーじゃないし そんなんじゃもはや喫茶店とは言えないでしょ。

音:そっか…寂しくなるね。

華:うん…。

(ラジオ)「大本営 海軍部発表。南太平洋某方面において我が海軍部隊…」。

(ラジオを切る音)

保:しかたないよね。そういう時代だから。まあ 今日はゆっくりしてってよ。

恵:うん。2人とも今日はお休み?

鉄男:いや 午後から取材です。

裕一:これからラジオ局。

恵:日曜日なのに大変ね。

保:裕一君 ラジオ聴いてるよ。相変わらず戦果が上がる度に放送局に呼び出されてるの?大変だね。

裕一:まあ 今は戦意高揚の曲 求められていますからね。

鉄男:まあ…大本営の発表と実際の戦況は結構違うみてえだけどな。

裕一:うん?

鉄男:うちの記者の大本営担当が言うには かなり旗色が悪いらしい。ガダルカナルも転進じゃなくて本当は退却だった。米英軍は南方で着実に反撃に転じてる。

裕一:でも局に来てる軍人は 今はわざを隙を見せて敵を引き付けてから 一気にたたく大作戦準備してるって もう少しの辛抱だからって。

鉄男:そりゃ 軍人はそう言うべな。

裕一:いや…新聞社だって 同じ報道してるでしょ? 事実と違うならどうしてそれを報道しないの?

鉄男:そだ単純な問題じゃねえんだよ! あのな 俺たちだって本当のこと…。

(ドアが開く音)

保:あっ いらっしゃいませ。

恵:いらっしゃいませ。

保:奥のテーブル どうぞ。

回想・軍人:先生 今こそ更なる戦意高揚が必要な時期です。ここがふんばりどころですよ。気弱になってる連中を先生の音楽で奮い立たせてやりましょう!

●音楽挺身隊

蓮沼:さすがですね。お見それいたしました。

潔子:どれも みんなで歌いやすそう。さすが音さんね!

音:よかった。

蓮沼:神林先生。

神林:ご苦労さまでした。今日は練習日と聞きましたが?

蓮沼:はい。慰問先の皆さんと合唱する案が出まして 今 選曲しておりました。

神林:合唱?

蓮沼:こちらが候補の曲でございます。

神林:これは…どういう基準で選んだのでしょうか?

蓮沼:あっ…はい それは…。

音:私が選曲しました。歌いやすくて心豊かになれる曲をと思って選びました。

神林:何をなまぬるいことを! いいですか? 我々の使命は軍需産業に従事する者たちの士気を高め 日本の勝利に貢献することです。音楽は軍需品なんですよ。

音:軍需品?

神林:今は芸術だの楽しみなどといった のんきなことを言っている時勢ではありません。必要なのは決戦意識と戦力の増強。戦争の役に立たない音楽など要らないのです!それが分からないのですか!?

音:よく分かりません。音楽は音楽だと思います。その音楽を聴いて 誰が何をどう思うかは人それぞれで…。

神林:あなたは 何にためにここに来たんですか?

音:歌を聴いてくれた人たちに笑顔になって頂くためです。

神林:話になりませんね。お帰りなさい。挺身隊に非国民は必要ありません。

●古山家・中庭

音:ありがとう。

裕一:どうしたの?

音:神林先生に…非国民って言われてしまって。さすがにこたえるね。でも…みんなが同じ考えでなくてはならないのかな? そうじゃない人は要らないっていう世の中は 私は嫌。もちろん 私も自分の国は好き。でも…何よりもまず家族や友達 周りの人たちに幸せでいてほしい。それって自分勝手なことなのかしら…。

裕一:でも…こうなってしまった以上 この国に生きる人間として…できることをやっていくしかないんじゃないのかな?

<<ごめんください。

●古山家・玄関

裕一:はい。

役場係員:古山裕一さんですか?

裕一:…はい。

役場係員:おめでとうございます。召集令状です。

(つづく)

●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。