朝ドラ【エール】16週78話、豊橋の関内馬具店で、将来の跡取りとして修業を積んでいた五郎だったが、師匠である岩城の試験に落ちてばかりで自信消失。
救いを求めて東京の古山家にやってきたら梅が追いかけてきて「私と結婚したくなくなったんでしょう?」と、こちらも勘違い。
双方の誤解も解けたところで長女の吟がやってきて、三姉妹の胸中の違いが鮮明になる戦時中、という感じだったでしょうか。
梅を演じる森七菜ちゃん、いい演技なんだけど、その声が小さくて聴きずらく感じるのはこのおじさんだけなんでしょうか? 年寄りのためにもうちょっとだけ声を張ってほしいと願い、森七菜ちゃんにエールです。
【エール】16週78話のセリフ書き出し
●古山家・玄関
裕一:はい…。わっ 五郎ちゃん! 久しぶり!
五郎:先生…。
裕一:何だ 何だ? うわうわ…。
五郎:先生…。
裕一:な…何だよ!何だよ!
五郎:先生…。
裕一:ちょっと! や…やめて!
●古山家・書斎
音:どうぞ。
五郎:すいません。
音:ごゆっくり。
裕一:…で どうしたの?
五郎:先生…。
裕一:うん。
五郎:僕はもう駄目かもしれません。
裕一:何が駄目なの?
五郎:梅ちゃんの実家でずっと修業を続けてきたけど…。
裕一:はい。
五郎:岩城さんの試験に落ちてばっかりで。
裕一:いや…でも…。
五郎:彼女と結婚する見通しが全然立たないんです!
裕一:五郎君 五郎君…。五郎君の腕はいいって 前 音のお母さん言ってたよ。うん? な…なんでだろう?
(戸を叩く音)
裕一:うん?
(戸を叩く音)
<音:はいはい…はいはい…。
●古山家・玄関
梅:五郎さん いるでしょう?
音:あっ ちょっと…。梅!
梅:どこに…。
●古山家・書斎
梅:あっ…どうも。
裕一:梅ちゃん。
梅:やっぱり ここにいた! どういうこと? うん? 何?
●古山家・居間
梅:ねえ五郎さん…この際だから はっきり言いん。
五郎:えっ?
梅:私と結婚したくなくなったんでしょう?
五郎:はあ!?
梅:だから わざと試験に落ちるようなことを…。
五郎:そんなわけ…。
梅:引っ込みがつかんくなったから 裕一さんに相談しに来たんでしょう!?
五郎:違うっつうの!
梅:じゃあ どうして!? ふだんは何の問題もなく仕事ができとる。ちゃんと納品できる品質のものが作れとる。なのに…試験になると全然で。もう正直に言って。私のことが嫌いになったんなら。
五郎:違うよ! おっかねえんだ。
(回想)
岩城:始め。
五郎:はい!
(回想閉じ)
五郎:次こそは受からなきゃって…焦れば焦るほど手が震えて 思うように動かなくなって。
回想・五郎:あれ? いてっ!
五郎:自分でも情けねえと思うけど…。
裕一:いや…う~ん…わ…分かるな~。僕もすごく緊張する方だから とても他人事とは思えないね!うん。
音:本番に弱い人っているよね。
裕一:ねっ ここにいたよ…。
梅:ちょっと! 駄目な人間みたいな言い方せんでよ…。
音:かばった…。
裕一:ねえ 五郎君…そういう時さ 頭ん中でね 好きな音楽流してみるといいかも。
五郎:好きな音楽?
裕一:そう。僕もね 緊張してうまく言葉が出なくなった時 いっつも頭ん中で好きな歌 歌ってた。そうすると自然と不思議と心が落ち着くの。
五郎:分かりました!
裕一:やってみて。
五郎:やってみます!
裕一:頑張って!
五郎:頑張るよ! 約束する!次は絶対合格する!
梅:分かった。
●古山家・台所
梅:ごめんね 巻き込んじゃって。
音:よかったね~仲直りできて。今日は泊まってきんね。
梅:うん。
音:最近は配給される食料も減って 大したもん作れんけど…。
華:吟伯母ちゃん 来たよ。
吟:ありがとう。梅~。
梅:久しぶり。
吟:何事かと思ったじゃん! 急に豊橋から出てきたっていうから。
梅:お騒がせしました。
音:いいでしょう。3人で会うのも久しぶりだし。
吟:まあね。ちょうどよかったわ。お魚 持ってきたの。
音:わあ…ありがとう! すごい…。
吟:ちょっと何ぃ!? それ もったいない! 今は何でもかんでも貴重なんだから。じゃがいもも皮に栄養あるんだから皮ごと煮ればおいしいのに! ちゃんと家事やっとるの?
梅:やっとるよ!
吟:どうせ 今もお母さん任せなんでしょう。貸しん。ほら。
●古山家・居間
裕一:いや~お魚おいしかったね。
五郎:はい! 今 あんないい魚 なかなか手に入らないですよ。
裕一:うん…。
梅:やっぱり軍人さんのうちは いろいろと優遇されとるんだね。
吟:変な言い方しんでよ。軍人はお国を守るために命を張っとるの。それに民間には分からん苦労だっていっぱいあるのよ。
裕一:あっ お義兄さん お元気ですか?
吟:転属決まって いよいよ前線に行くことになったって。
音:そっか…寂しくなるわね。
裕一:そっか…。
吟:最初からその覚悟で結婚しとるからね。あ~豊橋の方は?どう?お母さん 元気?
梅:うん 元気だけど…。最近 特高に目 つけられとる。
裕一:特高!?
梅:キリスト教の中でも うちの宗派は監視の対象みたい。教会にも行けんし集会も禁じられとる。
吟:大丈夫なの?
梅:目立つことしんかったら大丈夫だと思うけど…。毎日のように監視されとると やっぱり疲れるわ。
音:監視なんて…。何も悪い事しとらんのにね。
裕一:ねっ。
梅:文学だってそうだよ。言論統制も激しくなって 小説書いとるってだけで監視の対象になる。
裕一:梅ちゃんも?
梅:私は書くよ。今は出版できんくても ちょうど東京に出てきたし信頼できる編集者さんに見てもらうために原稿持ってきた。
裕一:そっか。
音:何でもかんでも統制されて不自由な世の中ね。
裕一:本当だね。
吟:お国を批判する人は 裁かれてもしかたないと思うけど。
梅:それ言いだしたら…文学も芸術も死ぬことになる。表現の自由は侵されていいものじゃない。
五郎:僕もそう思います。
吟:今は国民が一丸となってお国のために戦わんといかん時代なの。
音:うん…。でも 人が心で思うことって止めれんじゃないかな? 一致団結とか一丸となってとか言うけど 人はみんなそれぞれ違う考えがあって当たり前っていうか…。
吟:やっぱり あんたはのんきよね。いい年して 世の中のことが何も分かっとらん。
梅:そうかな? 私は音姉ちゃんの言っとること分かるけど。
吟:だから…。
(吟のため息)
吟:もういいわ。
●古山家・書斎
(ノックとドアの開閉音)
五郎:失礼します。
裕一:あっ…ありがとう。
五郎:遅くまで大変ですね。
裕一:うん。
五郎:懐かしいな…。
裕一:うん?
五郎:作曲の道は諦めましたけど 今でも音楽はよく聴くんです。
裕一:フフッ。
五郎:先生のレコードも全部買ってます。
裕一:うれしいな~ありがとう。
五郎:今は戦意高揚の曲しか作らせてもらえないんですかね?
裕一:うん?
五郎:書きたいものが書けなくなるって大変ですよね。
裕一:まあ…でも 僕はね 求められるものは全力で応えたいなって思ってる。まあ…仕事を頂けることは本当にね ありがたいことだからさ。
●古山家・中庭
音:ほっ ほっ ほっ…。
梅:おはよう。
音:おはよう!
梅:何しとるの?
音:うん? お芋作ってるの。梅もやりんよ。
梅:やだよ~。
音:体 動かすと気持ちいいよ!
五郎:おはようございます。
音:おはよう! よく寝られた?
五郎:はい。ぐっすり。あっ 僕 手伝います。
音:あっ 本当に? じゃあ そこにあるから。
五郎:はい!よし…。
音:どれ…。
五郎:よいしょ。
音:おお…頼もしい!五郎君 農業にも向いてそうだね。
五郎:ありがとうございます。
梅:やめてよ うちの大事な跡取りなんだから。
裕一:おはよう。
音:おはよう。
裕一:ああ…みんな 早いね。
梅:よし! 五郎さん 私も手伝う。んっ。
音:えっ? さっき やらんって。
裕一:ハハハハ…。
梅:1 2 ?
五郎:そうそうそう…。
梅:1 2 !
●古山家・居間
華:梅ちゃん。
梅:うん?
華:これ おばあちゃんにあげて。
梅:わっ 華ちゃん作ったの?
華:うん。
梅:かわいい~。おばあちゃん 喜ぶよ。
華:本当?
梅:うん。
音:今度は お母さんと一緒においでん。
梅:そうだね。
<<裕一:華~ 学校 遅れるよ。
華:は~い! 梅ちゃん またね。
梅:またね。
音:行ってらっしゃい。気を付けてね。
華:行ってきま~す。
音:それ 出版社に持っていく原稿?
梅:うん。大事なものだから慎重に扱わんと。よし…よし! 何? これ。音楽挺身隊? こんなのあるんだ。
音:行かんけどね。柄じゃないし。
梅:えっ? でも ここ入ったら歌えるんでしょう?
音:いや…でもほら こういうの向いとらんから。
梅:ふ~ん…その程度なんだ。
音:えっ?
梅:お姉ちゃんの歌に対する気持ち。こんな時まで大好きな歌ができるって幸せなことじゃん。戦争がもっと激しくなったらできんくなるかもしれん。なのに何でやらんの? 庭仕事やっとるだけでいいの? まあ…私が口出すことでもないけど。
●古山家・玄関
五郎:お世話になりました。今度はいい報告持ってきます。
裕一:待ってます。
音:気を付けてね。
梅:またね。
裕一:うん。
●古山家・中庭
裕一:久しぶりに梅ちゃんと五郎君に会えてよかったね。じゃあ 仕事行ってくるかな。
音:ねえ 裕一さん。
裕一:うん? うん?
音:私…やってみようかな。
裕一:何を?
音:音楽挺身隊。
裕一:えっ?
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。