朝ドラ【エール】16週76話、昭和16年12月8日、太平洋戦争が勃発。裕一は戦時歌謡の第一人者として多忙を極め 多くの曲を世に送り出していた。
そして昭和18年、佐藤久志に召集令状が来て盛大な壮行会を行うが、出征当日に身体検査で痔が発覚し、即日帰郷。
これを機会に福島に帰って父親の面倒を見るという久志。鉄男も作詞家の仕事を中断して新聞社の仕事を手伝うことになり、一旦、福島三羽ガラスは休止状態に。
再会の信じる3人であったが…、というところから今週もよろしくお願いいたします。
ちなみにですが、学生服で坊主頭の弘哉が「ごちそうさん」め以子の息子の泰介(菅田将暉)に雰囲気が似ていると思った人も多いはず?
菅田将暉の一番好きな役は断トツでごちそうさんの西門泰介です pic.twitter.com/UozeC3rJue
— おこめ (@0kome_tnsi) September 18, 2018
ということで、弘哉を演じる山時聡真(サントキ ソウマ)君の所属事務所は菅田将暉さんと同じトップコートです。
【エール】16週76話のセリフ書き出し
ラジオ放送:12月8日6時。帝国陸海軍は本8日未明 西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり。
昭和16年 太平洋戦争が勃発。世の中の戦時色はさらに深まろうとしていました。
●放送会館・放送室
丸井:先生 こちらです。え~皆さん 本日マレー沖にて海軍航空隊が英国東洋艦隊の戦艦プリンス・オブ・ウェールズとレパレスを撃沈したそうです!
裕一:すごいじゃないですか!
丸井:7時のニュース原稿です。そのあとにニュース歌謡を流したいので大至急 詞と曲をお願いします。あと編曲も。
裕一:あと3時間…分かりました。
丸井:お願いします。
開戦後 裕一は戦時歌謡のほかにニュース歌謡の仕事にも関わるようになっていきました。ニュース歌謡とは戦果を伝えるニュースの内容を盛り込み 短時間で作詞作曲され 生放送された歌のことです。
●古山家・居間
♪~(ラジオ)
音:華 お父さん 今日も遅くなるみたいだから先に頂きましょうか。
華:はい。
●放送会館・放送室
局員:お疲れさまでした。
裕一:お疲れさまでした。
裕一は戦時歌謡の第一人者として多忙を極め 多くの曲を世に送り出しました。
軍人:未明には首都マニラを一気に占領することになるでしょう。
丸井:おお 無敵皇軍ですね! 先生 腕が鳴るでしょう?
裕一:いや 恐れ多いです。頑張らないと。
●世田谷区・新屋町第二配給所
昭和18年
ミッドウエー海戦以降 日本は次第に苦境に立たされ 物資は不足し人々の生活も苦しくなっていきました。
配給員:確かに。
近所の主婦:ありがとうございます。
配給員:はい。
近所の主婦:お願いします。
音:お願いします。
配給員:古山さんとこは3人だね。1円50銭です。
音:はい。
配給員:ごくろうさま。
近所の主婦:ありがとうございます。
配給員:はい 確かに。
音:ありがとうございます。
配給員:はい 次の人。
音:お願いします。
●古山家・書斎
♪「蛙のなくねも かねの音も」「さながら」
華は11歳になりました。弘哉も変わらず音楽教室に通っていました。
音:はい 今日はここまで。せっちゃん 残念ですが今日で節子ちゃんがこの教室をやめることになりました。せっちゃん またいつでも遊びに来てね。
節子:はい。
大丈夫だよ。また一緒に歌えるよ。
ねっ。
●古山家・居間
音:華 また お芋ごはんでごめんね。
華:あっ ううん大丈夫。お芋 好きだし。
裕一:音楽教室の方は? どう?
音:また一人 やめちゃった。こんなご時世だしね。
裕一:あんまり よく思わない親御さんも多いんだろうね。
音:近所の奥さんにもいろいろ言われる。発表会も戦争中に不謹慎だって 結局できなかったし。
裕一:食べよう。頂きます。
華:頂きます。
音:頂きます。
(電話の着信音)
裕一:誰だろうね?こんな時間に。はい。あっ 久志?
●放送会館
智彦:古山先生!
裕一:お義兄さん!
智彦:視察で参りました。先生 ご活躍で何よりです。
裕一:お義兄さんもお忙しそうで。
智彦:早く前線に出られるよう志願してるところです。それではまた。
裕一:ごめん わざわざ来てもらって。
鉄男:いた 古山裕一の知り合いって言ったら入れた。
鉄男:あの人も随分偉くなったみてえだな。
放送局員:先生 原稿です。
鉄男:裕一のおかげか?
裕一:いや 僕は関係ない。
鉄男:…で 話って何だ?
裕一:うん。久志から電話があってね。
鉄男:うん。
裕一:召集令状が来たって。
鉄男:ついに来たか…。あいつ 何か言ってたか?
裕一:うん…いや それがね…。
(回想)
久志からの電話:ちなみに壮行会なんて絶対やんなくていいから。
裕一:うん?うん?
久志からの電話:いやいや 本当に。うん。気を遣わなくていいから。
(回想閉じ)
裕一:それって つまりさ…。
鉄男:やれってことだよな。
裕一:…ことだよね。
鉄男:うん。フッ。
●古山家・書斎
恵:こんばんは~。
保:こんばんは。
音と華:こんばんは。
恵:こんなご時世だし 大したもの持ってこれなかったけど。
音:いやいや うちも もうこれぐらいしか…。そういえば お店の名前変わってましたね 看板に「竹」って。
恵:敵性語は禁止だからね。あっ…ジャジャ~ン!
華:わっ クッキーだ!
保:それはね おからで作ったんだよ。小麦粉が入らないからね。
恵:華ちゃん たくさん食べてね。
華:うん!
音:ありがとうございます。
裕一:久志 連れてきたよ。
保:わっ!
恵:フフフ…。
裕一:久志 久志 久志…。
♪
久志:♪「土も草木も 火と燃える」「果てなき曠野 踏みわけて」「進む日の丸」
恵:普通 送り出す方が歌うんじゃないの?
音:本人たっての希望で。
久志:♪「明日の命を 誰か知る」
(拍手)
久志:みんなのおかげで僕がいます。私 佐藤久志は明日 出征いたします。お国のために力を尽くしてまいります!
●古山家・居間
音:<さようなら。気を付けてね。
<<(戸が閉まる音)
弘哉:裕一さん。
裕一:うん?
弘哉:ちょっといいですか?
裕一:うん。どうしたの?
(ハーモニカの修理)
裕一:はい。できた。
(ハーモニカの音)
裕一:うん。
弘哉:ちゃんと鳴る! よかった。ありがとうございます。
裕一:いいえ。
弘哉:お礼に肩もみます。
裕一:えっ? いいの?ありがとう。じゃあお願いします。ああ…うまいね。気持ちいい!
弘哉:母ちゃんにも いつも褒められます。
裕一:へえ~お母さんの肩ももんであげてるんだ。
弘哉:父ちゃん死んでから 母ちゃん 女手一つで僕を育ててくれたんです。仕事も家のことも一切手を抜かず きっちりやってすごいんです。
裕一:お母さん お仕事 何してるの?
弘哉:銀行の事務員です。
裕一:へえ~。僕もね 昔は銀行にいたんだ。
弘哉:えっ そうなんですか?
裕一:うん…。でもね どうしても音楽 諦めきれなくてね…。自分の道は自分で選ばなきゃと思ってね。
弘哉:自分の道は自分で選ぶ…。
裕一:うん。
弘哉:裕一さん。今 楽しいですか?
裕一:うん? う~ん…最近… 楽しいか楽しくないかっていうより う~ん…とにかく必死っていうのが正直なところかな~。
●古山家・玄関先
音:また来週ね。
裕一:気を付けて。
弘哉:はい 失礼します。
音:うん。
裕一:あれ 大将?
鉄男:よう。ちと 話があんだ。
●喫茶「竹」
久志:いや 確かに見た目はコーヒーだけどさ…。
保:あっ いらっしゃい。
恵:いらっしゃい。
久志:やあ。
裕一:や…いやいや「やあ」じゃない。
音:何でいるの?
鉄男:どういうことだ?
裕一:だってこの前 派手に送り出したばっかりだよ?
久志:ご覧の通り 戻ってきました。即日帰郷ってやつさ。
裕一:えっ?
久志:身体検査で落とされた。
音:ああ…。
久志:戦うことよりも しばらくは歌の仕事でお国に尽くせってさ。
裕一:うん…そっか。まあ…よかった。とりあえず座って。座ろう 座ろう。ねっ?
久志:いや 座んない。
裕一:うん?
鉄男:うん? 何で?
久志:いや…大丈夫だから。
鉄男:うん?
音:久志さん どこが悪かったんですか?
久志:いやまあ いいじゃない それは。
裕一:いやいや…よくないよ。どこ?何?
久志:(小声で)いや…お…お尻…。
裕一:えっ? えっ?
鉄男:えっ えっ 聞こえねえ 何?
久志:痔! 痔でした!
鉄男:痔?
久志:痔!
裕一:痔ってお尻の?
久志:いや お尻以外に痔…どこにあんだよ!?
音:何で痔に…。
恵:いつから痔なの?
保:痔って いぼの方? 切れる方?
久志:いや そんな みんなで連呼しないでよ。
当時 痔が理由で招集免除となることは珍しくありませんでした。
久志:情けないよな。もう あんな盛大に送ってもらったのにさ…。
裕一:いや そんなことないよ。華もさ 寂しがってたから喜ぶ。
久志:いや…この機会に福島に戻ろうと思ってる。
裕一:福島?
久志:親父が心配なんだ。まあ もう年だからあちこちガタが来てて…。向こうを拠点に慰問に回ろうかと思ってる。
音:そっか…お父さん 喜びますね。
久志:国に役立たずの烙印を押された僕だけど 親孝行だったらできる。あの人の息子は僕一人だけだから。
鉄男:実は…俺も作詞の仕事は一旦休むことにした。
裕一:えっ…何で?
鉄男:昔の上司がこっちの新聞社に勤めてて 人手が足りねえから来てほしいって。世話になった人の頼みだしな。
裕一:そっか…。
音:福島三羽ガラスの次の曲 楽しみにしてたんだけど。
裕一:いや…諦めないよ 僕は。諦めない!今は…ねえ こういう時だからしかたないけど。
鉄男:ああ…またいつかやろう。
裕一:うん!
久志:ああ 3人で。
裕一:絶対!
いつ何が起こるか分からない戦時下に確かな約束などありませんでした。それでもこの時の3人は再会を信じていたのです。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。