朝ドラ【エール】15週74話、「暁に祈る」の主題歌制作で6回連続で没を出された鉄男を励まそうと、鉄男を連れて福島に帰る裕一。そこにはすでに久志も到着していて、やがて藤堂先生の姿も。
悩む鉄男に対して藤堂先生がかけた心に刺さる言葉がこちら。
俺のことを思って書いてみてくれないか? 実は…出征することになったんだ。うちの父は軍人でね 若い時には反発していたが 自分も親になってみて親父の気持ちが分かるようになった。お国のために立派に役目を果たしてくるよ。歌って心の支えになるだろ? 誰にでも自分にとって大切な曲があるもんだ。もし村野と古山が作った曲と共に行けたら こんなに心強いことはない。
【エール】15週74話のセリフ書き出し
復員兵・白石:地獄だよ 戦場は。心殺さないとやってらんねえ。
♪
武田少佐:話になりませんな。あなたは根本が理解できていない。
♪
智彦:もう一度だけ 村野さんの歌詞を拝見するとのことです。
●おでん屋台
裕一:せっかくチャンスもらったんだからさ もう一度書いてみようよ。
鉄男:もういいって。俺はクビになったんだ。
裕一:そ…そんなことないよ。
鉄男:あの仕事は俺には向いてなかったんだよ。
裕一:大将 聞いて。
鉄男:とにかく もう関わる気ねえから。
●古山家・居間
裕一:大将もいろいろ悩んじゃってさ 本領を発揮できてないだけだから…。
音:6回も没になったら自信なくしちゃうのも無理ないと思うけど。
裕一:何かな~きっかけがあればいいんだけど。
音:うん…。
裕一:そっか…。
●喫茶店「バンブー」
恵:えっ? 裕一さん 福島に行ったの?
保:鉄男君と2人で?
音:はい。田舎に帰れば鉄男さんの気分も少しは変わるんじゃないかって。
恵:あ~いいかもね。
保:分かるな~。原点に帰りたくなる時ってあるよね。
恵:あるの?
保:あるさ。長く生きてると 時々ふっと 人生を見つけ直したくなることって誰にでもさ…。
恵:鉄男さん 元気になるといいわね。
音:そうですね。
保:僕の原点は やっぱり本の匂いかな。本屋で紙の匂いを嗅ぐと何とも言えない…。
恵:福島三羽ガラスの曲 私たちも聴きたいもんね。
音:はい。裕一さんたちの夢なので。
恵:うん。
保:夢なので。
●福島・古山家・玄関先
鉄男:本当に世話になっていいのか?
裕一:もちろん。好きなだけ泊まってって。ただいま~。
鉄男:お邪魔します!
裕一:さあ 入って入って。
●福島・古山家・居間
裕一:ほら 大将 上がって。
久志:どうぞ。
主婦A:いや~うれしい! 見で!
主婦B:私も頂けっかしら?
久志:もちろんです。
鉄男:久志?
裕一:何で? ちょっと…。
まさ:裕一。
裕一:あっ!
まさ:お帰り。
裕一:母さん。ちょ…ねえ 何で? 何で何で何で?
まさ:歌手の方まで来てくれて皆さん大喜びよ。
裕一:う…うん…。
主婦B:「露営の歌」大好きなの!レコードも買ったのよ。
久志:本当ですか。うれしいな。
主婦B:実物もいいお声だわ~!
(せきばらい)
久志:ありがとうございます。
主婦A:あっ…。
主婦B:あ~ 裕ちゃん 久しぶり!
裕一:あ~どうも ご無沙汰してます。
主婦B:歌手の佐藤さん いたもんでびっくりだわい。
裕一:あ~それはそれは…。ちょちょ…ねえ 何してんの?何でえ?
久志:僕だって三羽ガラスの一員だからね。仲間外れにしようたってそうはいかない。
♪
久志:これ つまらないものですが。
まさ:どら焼き? すみません わざわざ。
久志:ここのどら焼き あんこがとってもおいしいんです。
まさ:お父さんにお供えしなきゃ。
裕一:そうだね フフッ。
まさ:うちのお父さんね お酒も大好きだったけど あんこも大好物だったの。早速 開けさせて頂くわね。ちょっと待ってて。
浩二:ただいま~。
裕一:浩二だ! 浩二 ただいま!
浩二:兄ちゃん お帰り。
裕一:弟の浩二。
浩二:どうも。
鉄男:どうも。
久志:お邪魔してます。
裕一:今ね 市役所でりんご栽培の支援してんの。どう?最近。
浩二:あ~なんとか一歩ずつ進んでる。
裕一:そっか。
浩二:うん。あっ それにしても兄さんの方もいがったな。
裕一:うん?
浩二:「露営の歌」。
裕一:ああ…ありがとう。
浩二:近所から 兄さん町の誇りだって言われて。
裕一:えっ!
浩二:母さんも喜んでる。
裕一:ハハハ…。
浩二:そうだ そうだ… これ よかったら皆さんで。
鉄男:あ~わざわざどうも。
久志:よくできた弟さんだ。
裕一:ありがとう。
浩二:じゃあ 僕はこれで。
裕一:えっ!? もう行くの?
浩二:あ~今から生産組合の集まりなんだ。
裕一:そっか。
浩二:じゃあ ごゆっくり。
久志:また。
裕一:気ぃ付けて。
●福島・古山家・二階の裕一の部屋
鉄男:「露営の歌」人気すげえな。2人とも福島の星だな。
裕一:母さんも浩二も大袈裟だったよ。
鉄男:お母さんも弟さんもいい人だ。いい家族だな。
裕一:まあ 顔見っと ほっとするよね。
鉄男:久志は? 実家は戻んなくていいのか?
久志:実はちょくちょくこっち戻ってきてんだ。
裕一:へえ…。
久志:父さんも年取ってあちこちガタが来てて心配でね。
鉄男:そっか…家族がいっと 心配事が増えるもんなんだな。
<<まさ:裕一 いらしたわよ。
裕一:大将立って。久志。
鉄男:何?
裕一:いいからいいから…下 行こう。行こう行こう。お客さん お客さん。
久志:えっ?
●福島・古山家・居間
鉄男:えっ?
久志:藤堂先生!
藤堂:よう みんな。元気そうだな。
昌子:裕一君 お久しぶり!
裕一:昌子さん お久しぶりです。どうしてもね 藤堂先生に会いたくて 遊びに来て下さいって誘ったの!
まさ:今夜は宴会ね!
裕一:うん!
●福島・古山家・台所
久志:よし…よいしょ。
まさ:ありがとね。助かった。
久志:お安い御用です。よいしょ。
まさ:久しぶりに大勢集まってうれしいわ。裕一にも こんなにいいお友達いたのね。
久志:裕一君といるとほっとするんです。僕たちの癒しです。
まさ:癒し? フフッ。
久志:東京でもみんなで助け合ってるんでどうぞご心配なく。
まさ:ありがとう。これからもよろしくお願いします。
久志:よろしくお願いします。
●福島・古山家・中庭
裕一:上から下ろして…左に…。
憲太:出来た!
裕一:そう 出来た 出来た。
昌子:フフフフ…。
裕一:憲太君 5歳ですか。大きくなりましたね。
昌子:うそみたいよね~私たちが親になってるなんて。
裕一:本当ですよ。
昌子:懐かしいわね。銀行にいた頃。ダンスホールの事件とかいろいろあったよね。
裕一:ハハハ…。ありましたね。あっ 上手!
昌子:う~ん!
憲太:出来た!
昌子:アハハハ…。あのころから ずっと…もっと前から裕一君のそばには音楽があったのよね。
裕一:まあ 本当に小学生の時に藤堂先生がハーモニカ薦めてくれなかったら僕の人生 全然違うもんになってたと思います。
昌子:そうね…。私も子どもに音楽教えてるあの人が一番好きなんだけどね。
●福島・神社の境内
鉄男:先生…すみませんでした。ずっと謝んなくちゃと思っていました。先生が紹介してくれた新聞社相談もせずに辞めてしまって。
藤堂:ああ…そんなの気にするな。好きなことをやればいいんだ。
鉄男:こんな自分が道 踏み外さずなんとか生きてこられたのも先生のおかげです。
藤堂:…で どうした?
鉄男:えっ?
藤堂:いや 何か…話を聞いてやってほしいって 古山が。
鉄男:そういうことか…。
藤堂:まあ 別に話さなくていい。こうして会えただけで俺はうれしいよ。
鉄男:陸軍から受けた仕事で…6回連続不採用。あげくの果てにクビになりました。
藤堂:そりゃ…しんどいな。
鉄男:裕一は諦めず 一緒にやろうって言ってくれてますけど…。愛馬精神とか戦意高揚って言われても どうしても気持ち乗せらんなくて。
●福島・古山家・中庭
裕一:出征? 先生がどうして?
昌子:実はあの人 予備役将校なのよ。
裕一:戦地に行かれるんですか?
昌子:恐らく そうだろうって。だからあの人 今日をすごく楽しみにしてたの。ありがとね 裕一君。
裕一:いや…いやいや。
●福島・神社の境内
藤堂:俺さ…「福島行進曲」好きなんだよ。
鉄男:ありがとうございます。
藤堂:あれって たった一人のことを思って自分の気持ちをつづった歌だろ?
鉄男:はい そうです。
藤堂:誰か一人に向けて書かれた曲って 不思議と多くの人の心に刺さるもんだよな。
鉄男:ああ…。
藤堂:今度は…俺のことを思って書いてみてくれないか? 実は…出征することになったんだ。
鉄男:えっ?
藤堂:うちの父は軍人でね 若い時には反発していたが 自分も親になってみて親父の気持ちが分かるようになった。お国のために立派に役目を果たしてくるよ。歌って心の支えになるだろ? 誰にでも自分にとって大切な曲があるもんだ。
鉄男:はい。
藤堂:もし村野と古山が作った曲と共に行けたら こんなに心強いことはない。
●福島・古山家・居間
久志:はい。お母さん…お母さんの煮物 最高でした。あのおだしの風味が一流の料亭にも負けない品があります。
まさ:そうかしら?適当なんだけど。
昌子:アハハ…。久志君って 子どもの頃からこんなだったの?
藤堂:ああ。こんなだったね。
久志:「こんなだったね」って何ですか。
藤堂:あっ そのつまり…独自の世界を持ってたってことだ。
昌子:フフフ…。
藤堂:古山は気弱なとこもあるけど 根っこは頑固で思い込んだら一直線。
まさ:さすが先生! よく見てらっしゃるわ。
藤堂:村野は学校一のガキ大将だった。
昌子:分かる。けんか強そう。
藤堂:でも本当はすごく繊細でな…。みんなとは楽しい思い出ばっかりだ。本当に幸せな教師生活だったよ。
久志:フッ…いや そんな先生やめるみたいな言い方しないで下さいよ。ねえ?
●福島・古山家・二階の裕一の部屋
久志:先生ほど 教師が向いてる人はいないのにね。
裕一:先生にはいろんなこと教えてもらった。
鉄男:ああ…。
久志:俺は…歌う楽しさを教わった。
鉄男:俺は 詩 諦めんなって背中押してもらった。
裕一:僕は得意なもんを見つけてもらった。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。