朝ドラ【エール】15週72話、「露営の歌」のヒットから1年後。陸軍の馬政課に勤務する吟の夫の智彦が裕一を訪ねてきて軍馬に対する世間の関心を高めるための映画「暁に祈る」の主題歌を作ってほしいと。
そこで裕一は作詞家と歌手を自ら指定することを条件に、この話を引き受けて、ついに“福島三羽ガラス”が始動。
一方、音は念願の音楽学校を自宅で開くが、生徒たちが弘哉君の音痴をめぐって一騒動。それを一歩外れたところから眺める華ちゃん。
華ちゃんの無関心ぶりは、お母さんが取られてしまうという嫉妬からの行動で、よくある話。
そして陸軍・馬政課の武田少佐は、戦後、リゾート開発の会社に勤めて「ぎふサンバランド」をふくろう商店街に作ろうとした人だと「半分、青い。」が懐かしい斎藤歩さんは55歳で公益財団法人 北海道演劇財団理事長です。
【エール】15週72話のセリフ書き出し
●古山家・居間
智彦:古山さんに曲を作って頂きたいんです。私の属する陸軍の馬政課でこの度、映画を作ることになったんです。「暁に祈る」という題名で軍馬に対する世間の関心を高めるための作品です。この映画の主題歌を是非 古山さんにお願いしたいんです。
裕一:はあ…。
智彦:「露営の歌」は本当にすばらしい曲です。古山さんが愛国歌謡の第一人者であることは誰もが認めるところです。
裕一:そんな そんな…。
智彦:「暁に祈る」でも是非 その手腕を発揮して頂きたくお願いにあがりました!
裕一:あっ…いや もうお声をおかけ頂き本当にありがとうございます。ちなみに あの…詞はもう出来ているんでしょうか?
智彦:あっ いや…作詞家は現在選定中です。
裕一:あの…でしたら 作詞家と歌い手をこちらで指定させてもらうことは可能でしょうか?
●古山家・台所
吟:陸軍の仕事に関われるなんてとっても名誉なことだわ。裕一さん よかったわね。
音:映画の主題歌は初めてだから楽しみ。お姉ちゃん 化粧しとらんね。
吟:今はお国の非常時よ。着飾る暇があったらやるべきこと やらんと。
音:やるべきこと…。
吟:例えば…国防婦人会。
国防婦人会とは かっぽう着にたすき姿で出征兵士の見送りなどに参加していた戦争を支える女性団体です。
吟:あんたんとこの分会長さんから聞いたわよ。顔 出しとらんって。
音:いや~…まあね…。
吟:今度の会合は必ず行きさんよ。最近は出征する人も多くて お見送りも大変なんだから。
音:何か 苦手なんだよね。班長さん 怖そうだし。
吟:また そんな子どもみたいなこと言って。
華:お母さんは子どもじゃないよ。大人だよ。
吟:えっ? あっ…えっと…それはね…。
音:あさり 下さいな。
華:はい どうぞ。
音:ありがとう。
●古山家・居間
華:どうぞ。
智彦:ありがとう。
華:フフッ。
智彦:華ちゃんはお利口さんだな~。
華:ヘヘッ。
智彦:今 いくつでしたっけ?
音:もうすぐ6歳です。
智彦:ああ…かわいい盛りだ。
●古山家・玄関
(戸の開閉音)
智彦:古山さんちとは上手につきあってくれよ。彼は陸軍にとって大事な人材だ。
吟:音楽教室って…のんきでいいわよね。
●おでん屋台
鉄男:映画の主題歌?
裕一:大将と久志と僕 福島三羽ガラスでやらしてくれるって!
鉄男:えっ…本当か!?
裕一:うん! 大将 久志は引き受けてくれたよ。どうする?
鉄男:もちろん やるに決まってんだろ!
裕一:あ~よかった! 頑張ろうね!
鉄男:ありがとな! よろしく頼む。
裕一:こっちこそ。…で これが資料。
鉄男:「暁に祈る」。
裕一:うん。
鉄男:愛馬精神を啓蒙…。
裕一:軍馬を題材にした映画なんだって。
鉄男:馬か…。
裕一:うん。
鉄男:あんまし縁ねえけどな。
裕一:大将ならできるよ! 頑張ろう!
鉄男:おう!
裕一:うん。
●喫茶店「バンブー」
保:へえ~福島三羽ガラス ついに始動か。
音:はい。今日も3人で打ち合わせですって。
恵:音さんの方はどう? 音楽教室 生徒さん集まった?
音:いや全然。
恵:一人も?
音:一人も来ません。無料なのに…。
保:もしかしたら それが原因だったりして。
音:どういう意味ですか?
保:ほら…タダって何か怪しいじゃない? 何されるか分かんないって警戒されてるとか。
音:いやいや いやいや…無料にしたのは 私は教えるプロじゃないし 空いた時間で子どもたちと音楽を楽しめる時間があればいいなと思ったからで。
恵:分かった! 私に任せて。
♪
恵:出来た! どうかしら?これ。
音:すっごい! 職人さんみたい。
恵:フフッ。
恵:時々 頼まれて新聞広告描いてたから。
保:へえ~初めて聞いた。
恵:これを あとは人の多い場所に貼って…。あっ! ご主人 ちょっといいですか?
団子屋:うん うん。
恵:失礼します。これ 見て下さい。
団子屋:音楽教室?
恵:うん! この教室の講師を務める古山音さんは 東京帝国音楽学校の声楽科出身で なんとあの「椿姫」の主役にまで選ばれるような実力の持ち主なんです。
団子屋:へえ~!
恵:その音さんが じきじきに教えて下さるって これ 結構すごいことですよ。しかもお月謝なしですって。子どもは国の宝 心豊かに育ってほしい。そのお手伝いができることは音楽家の使命だって そうおっしゃってます。
団子屋:立派な先生なんだね~!
音:(小声で)そんなこと言ってない…。
保:あの人 人気の団子屋さんのご主人なんだよ。お店にチラシ貼ってもらえたら効果あるんじゃない?
音:なるほど。
恵:すごく感謝されると思いますよ。
団子屋:店に貼っとくよ これ。
恵:あっ ありがとうございます!
音:フフッ。
団子屋:立派な先生なんだね。
保:いっらっしゃいませ。
恵:いらっしゃい。
トキコ:あの…この音楽教室は どちらにあるんでしょうか?
音:はい! うちです! すぐそこです。
トキコ:うちの息子 通わせてみたいんですけど…。
音:はい! 是非!
●古山家・書斎
恵たちの協力によって生徒たちが続々と集まり ついに音の音楽教室が始まることになりました。
音:古山音です。どうぞよろしく。
シズ子:音先生 よろしくお願いします。
子どもたち:よろしくお願いします。
音:先生…。
(音のせきばらい)
音:では早速 今日は「浜辺の歌」をみんなで合唱しましょう。
子どもたち:はい!
音:華も一緒に歌おうよ。
華:私はいい。
音:歌おうよ。
華:いいの!
♪
音:♪「あした浜辺を」「さ迷えば」さん はい。
子どもたち:♪「明日浜辺を さ迷えば」
(笑い声)
シズ子:ちょっとやめてよ。弘哉君 ひっどい音痴。
(笑い声)
音:大丈夫 大丈夫。声はよく出てるから。今のところからもう一回。はい。
子どもたち:♪「明日浜辺を」
(笑い声)
音:大丈夫 大丈夫。もう一回やろう。ねっ?
●古山家・玄関
シズ子:音先生 さようなら。
音:さようなら。気を付けてね。
子どもたち:さようなら~。
音:さようなら。
澄子:難しかったね。
節子:ね~。
音:弘哉君 また来週ね。
弘哉:さようなら。
佐智子:弘哉君。弘哉君 来週も来るよね?
弘哉:こんなとこ 本当は来たくなかったんだ。でも母ちゃんが行ってみろってしつこく言うから。
佐智子:そのうち 楽しくなるかもよ。
弘哉:もういいよ。笑われるだけだし。
佐智子:そんなこと言わないで。また一緒にやろう?ねっ? 行こっ。
裕一:あれ 鍵かかってる…。
佐智子:こんにちは。
裕一:あっ こんにちは。
●古山家・居間
音:弘哉君のお母さんからも 歌が苦手なことは聞いてたんだけど…。
裕一:まあ ほら初日だしさ 気長にやろう?
音:その前にやめちゃうかも。
裕一:いや 彼はね…やめないと思う。
音:どうして?
裕一:うん? どうしてかな。華は? 一緒にやったの? 今日。
華:私はいいの。
音:何度も誘ったんだけどね。
裕一:華 どうしてやらないの?
華:これにしよ。
裕一:(小声で)ねえ…音楽 興味ないのかな?
音:まあ そのうち やりたくなる時が来るかもしれないし。
裕一:そうだね。あ…ありがとう。
●古山家・書斎
子どもたち:♪「風の音よ 雲のさまよ」「よする波も かいの色も」
シズ子:弘哉君 いいかげんにしてよ。きれいな歌が台なし!
澄子:本当よ!
シズ子:こんなんじゃ歌ってても楽しくない。
音:シズ子ちゃん…。
佐智子:でもシズ子ちゃんだって 少し音程外れてたよ。
シズ子:はあ? 私も音痴だって言うの?
音:2人ともけんかしないの。ねっ?
弘哉:もういいよ。
音:えっ?
弘哉:僕 もうやめます!
音:あっ 弘哉君!
♪
裕一:弘哉君 ちょっといい? はい。あげる。
ハーモニカ♪(浜辺の歌)
弘哉:すごい…。
裕一:フフフ…吹いてみる? 吹いてみる? ここ。そうそう。
●陸軍・馬政課
(ノックとドアが開く音)
智彦:私の上官の武田少佐です。
裕一:どうも。こ…古山裕一です。
鉄男:初めまして。村野鉄男です。
武田:どうぞ お掛け下さい。
鉄男:はい。
裕一:失礼します。
武田:では 早速ですが…。
鉄男:はい。こちらが詩の原稿です。
武田:軟弱ですな。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。