朝ドラ【エール】22週107話、福島信夫小学校・校歌のお披露目会の後、「湯の町エレジー」の大ファンである佐久間校長から急遽、こどもたちの前で講演してほしいと言われた鉄男。
村野鉄男です。え~久しぶりの母校 懐かしいです。ここに通ってた頃の自分はけんかばっかしてて まあ学校一の悪童と呼ばれていましたが 本当はけんかより休み時間に「古今和歌集」を読んだり詩を書いたりする方が好きな子どもでした。学校は…すごく楽しかった。でも残念ながら卒業はできませんでした。実家の魚屋が借金抱えて夜逃げしたんです。そのあとも…もういろいろあって…家族とは離れ離れになりました。すさんだ家に生まれて貧乏で孤独で苦労ばっかししてて…。自分の境遇を恨んだ時もあったけど…。そんなくじけそうな気持を支えてくれたのは ここの学校で出会った人たちでした。恩師の藤堂先生には夢を諦めんなって背中を押して下さった。それから…古山裕一 佐藤久志。彼らは大人になった今でもよき友人よき仕事仲間としていつも力づけてくれる。子ども頃の自分に会えんなら言ってやりてえ。大丈夫だ。おめえ…おめえ なかなか悪くねえ人生送れっぞって。たとえ…今つらくても未来は変えられます。皆さんも人との縁を大切に自分の道を切り開いていって下さい。聞いてくれてありがとうございます。
これを聴いていた明男は、そのことを家に帰って話すと、父親の三上典男の顔色が変わり、明日は涙の再会予定。
鉄男の弟。三上典男を演じるのは泉澤祐希さんで、これで朝ドラ「マッサン」「ひよっこ」に続いて3作品目。
「ひよっこ」では角谷三男役で「エール」では三上典男役。朝ドラ史を編集する上で非常に紛らわしいと書いておきます(苦笑)。
【エール】22週107話セリフ書き出し
●福島信夫小学校・校長室
佐久間校長:この度はすばらしい校歌をありがとうございました。しかし…古山先生に引き受けて頂けただけでも夢のようなのに まさか村野先生に作詞して頂けるとは感無量です!
鉄男:いや こちらこそ母校のお役に立ててうれしいです。
佐久間校長:アハハハ…え~実は村野先生にもう一つだけお願い事がございまして お披露目会のあと我が校の先輩として講演して頂けないでしょうか?
鉄男:えっ?
●福島信夫小学校・校庭
鉄男:講演なんてやったことねえぞ…何で裕一じゃなくて俺なんだ?
裕一:校長先生が「湯の町エレジー」の大ファンなんだって。さすが木枯・村野コンビ。まあいいじゃないたまには。ほら 何話してもいいって言ってたし。
鉄男:そう言われてもな…何 話せばいいんだか。
♪
裕一:懐かしいね…。
鉄男:うん。
裕一:この辺りはちっとも変わんない。
●福島・古山家・仏間
(鈴の音)
裕一:父さん ただいま。おかげさまでこっちはなんとかやってるよ。よいしょ…。
まさ:疲れたでしょう?あっち行って一息入れて。
鉄男:お世話になります。これ…つまらないものですけど。
まさ:あっ…すみません。頂きます。
裕一:母さんは? 体の方 どう?
まさ:う~ん だましだましね。もう年だもの。しかたないわ。
裕一:でも元気そうでよかったよ。安心した。
●福島・古山家・居間
まさ:お代わり まだたくさんありますからね。
鉄男:ありがとうございます。みそ汁 うまいです。ほっとします。
まさ:よかった。
裕一:浩二は? 最近仕事どうなの?
浩二:うん…最近はりんごやる農家も増えてきたんだ。
裕一:んっ 順調なんだ!よかった!
まさ:あとはいい人を見つけてくれればいいんだけど。
浩二:その話はいいって。
まさ:あなたがお嫁さんもらってくれたら 私はお父さんのところに安心して行けるのに。
浩二:じゃあ ずっと一人でいるよ。母さんには長生きしてほしいからね。
まさ:また そうやって屁理屈言って!
裕一:あ~父さんには悪いけど 母さんにはまだまだこっちいてもらわないと。
まさ:あなたまで屁理屈言って!
浩二:んだね 兄ちゃん。
裕一:ねえ!
●福島・古山家・裕一の部屋
鉄男:本当 いい家族だ。仲いいよな。
裕一:弟とはね まあいろいろあったけど。
鉄男:それでも今は笑って話せてる。
裕一:まあね。大将にも弟いたよね?
鉄男:…。
裕一:ごめん ごめん。よし じゃあ 明日早いし もう寝ようかね。
鉄男:典男っつうんだ。弟。いつも俺の後くっついて かわいいやつだった。俺んち 夜逃げしたべ?
裕一:うん。
鉄男:あのあと 山奥の掘建て小屋で家族4人で暮らしてた。親父は働きもしねえで酒飲んでばっかで…。そんな暮らしが続いたある日。
(回想)
鉄男:母ちゃん 典男は?
富紀子:あんたと一緒じゃねがったのかい?
善治:フンッ。こだ家 出てくってよ。ガキの分際で生意気に。
(回想閉じ)
鉄男:典男が突然 家でした。
回想・鉄男:典男!
鉄男:毎日必死に捜し回って警察にも届けたけど 結局半年たっても典男は見つかんねがった。
回想・鉄男:典男!
(回想)
富紀子:鉄男・あんたもここ出てきな。
鉄男:何言ってんだ。母ちゃん置いてけるわけねえべ。
富紀子:私は好きでここさいんだ。あんたがいなくなってくれたら 食いぶちも減って助かる。鉄男。あなたに家族はいねえ。自分の道歩いていけ。二度と帰ってくんな。
(回想閉じ)
鉄男:藤堂先生にもらった名刺を頼りに家を出た。それからずっと…自分には家族はいねえって自分に言い聞かせて生きてきた。俺は冷てえ人間だ。弟は守れねえ。母ちゃんのこと 捨てた。俺はどうしようもねえ人間だ。
裕一:大将がさ…誰よりもあったかい人間ってことは みんな知ってるよ。いっつも自分のこと 後回しで周りのことばっかに一生懸命でさ。大将は強い…強くて優しいよ。だからもうこれ以上 自分責めないでよ。
鉄男:優しいのは…おめえだ。ありがとな。
(枕投げ)
鉄男:うわっ…。
●福島信夫小学校・教室
翌日 校歌のお披露目会が開かれました。
(拍手)
明男:あっ 楽譜 教室に忘れた!
盛田先生:三上か。隣に見せてもらえ。
(笑い声)
明男:見せて。
盛田先生:失礼しました。
子どもたち:♪「吾妻の嶺を仰ぎ見し」「我等の郷に栄あれ」「修身専念」
盛田先生:では 校歌を作詞された村野鉄男先生 よろしくお願いします。
(拍手)
鉄男:村野鉄男です。え~久しぶりの母校 懐かしいです。ここに通ってた頃の自分はけんかばっかしてて まあ学校一の悪童と呼ばれていましたが 本当はけんかより休み時間に「古今和歌集」を読んだり詩を書いたりする方が好きな子どもでした。学校は…すごく楽しかった。でも残念ながら卒業はできませんでした。実家の魚屋が借金抱えて夜逃げしたんです。そのあとも…もういろいろあって…家族とは離れ離れになりました。すさんだ家に生まれて貧乏で孤独で苦労ばっかししてて…。自分の境遇を恨んだ時もあったけど…。そんなくじけそうな気持を支えてくれたのは ここの学校で出会った人たちでした。恩師の藤堂先生には夢を諦めんなって背中を押して下さった。それから…古山裕一 佐藤久志。彼らは大人になった今でもよき友人よき仕事仲間としていつも力づけてくれる。子ども頃の自分に会えんなら言ってやりてえ。大丈夫だ。おめえ…おめえ なかなか悪くねえ人生送れっぞって。たとえ…今つらくても未来は変えられます。皆さんも人との縁を大切に自分の道を切り開いていって下さい。聞いてくれてありがとうございます。
(拍手)
●福島信夫小学校・校庭
鉄男:来てよかったよ。ありがとな 裕一。
裕一:ううん。
●福島・理容所「三上」
多美子:いつもどうも。ありがとうございました!あっ…。
明男:ただいま!
三上:裏から入れって言ってっぺ!お客さん来てんだぞ。
明男:ごめんなさい。
客:相変わらず元気いいな。
明男:あっ おっちゃん こんにちは!
客:うい。
多美子:お帰り 明男。校歌 うまく歌えたの?
明男:うん!みんなに褒められた。東京から来た有名人の話も面白かった。
多美子:有名人?
明男:校歌作詞した人! うちの学校通ってたんだって。
三上:へえ~。
明男:その人ね 子どもの時はけんかばっかして学校一の悪童って言われてたって。
多美子:そんな悪童が作詞家になったの?
明男:本当はけんかより詩書いたり読んだりするのが好きだったんだって。こきん…何とかっつう。
客:「古今和歌集」か。
明男:んだ!それ!
客:卒業生の話っつうのは面白えもんだよな。
明男:卒業はしてねえって言ってた。その人んち 魚屋さんで借金あって夜逃げしたんだって。
三上:その人…何つう名前だ?
明男:むら…何だっけ?
「福島信夫小学校校歌 作詞 村野鉄男 作曲 古山裕一」
(つづく)