朝ドラ【エール】20週100話、「栄冠は君に輝く」の歌い手になることを躊躇する久志。その理由は同情されたくないというものだったが…。
大会本部・大倉と裕一とのやり取りを聞かされた久志は、裕一の想いに心揺さぶられるも、しかし、こんなに希望にあふれた歌詞は自分には無理だと。
そんな久志を夜行列車に乗せて大阪の甲子園に向かった裕一。
作詞した多田さんは16歳の時 試合中のけがで足を切断して甲子園の夢を失ったそうだ。もう二度と野球ができないという葛藤の日々を乗り越えて 多田さんはあの詞を書いた。自分にできることは未来ある若者を応援することだって。絶望を経験した彼だからこそあの詞を生み出せたんだと思う。多田さんと同じよう…君も絶望を知ってる。その原因を作ったのは…僕だ。戦時歌謡に君を誘った。久志…苦しめてしまって…本当に申し訳なかった。僕も…僕もどん底まで落ちた。でも…どん底まで落ちた僕たちにしか伝えられないものがあるって信じてる。戦争が終わって…またこのグラウンドで試合ができる時代になった! 選手もお客さんも…みんな楽しみに待ってる!僕たちも…多田さんの思い 形にして未来ある若者に 一緒にエール送ろうよ!勝った人にも負けた人にも 頑張ったね…頑張ろうね…一生懸命な姿見せてくれてありがとうって!久志…。君なら歌える。お前じゃなきゃ駄目なんだよ!
朝ドラ「エール」史上、最も長いセリフが誕生。そして最も感動した回として記憶に残るであろう第100話でした。可能であれば録画保存をお勧めです。
【エール】20週100話セリフ書き出し
●闇市・久志が住む掘立小屋の前
裕一:あっ…やあ 久志。ねえ…これ 見てほしい。さっき大会本部から誰か歌手を推薦してほしいって言われた。君の名前を伝えた。
久志:何で勝手にそんなことしてんだよ。
裕一:僕は君に歌ってほしいから。「夜更けの街」聴いた時ね 改めて思ったんだよ。やっぱ この曲は久志の歌声で完成させたい。まあ とにかく一度 譜面見て。
久志:はあ…本当にしつこいね!
裕一:ハハハハ…だよね。自分でもそう思う。んっ。また来るから。
●古山家・華の部屋
華:フォアボール。
<<音:華。
華:ファウル・ティップ。ふ~ん…。
音:何読んでいるの?
華:黙って入ってこないでよ!
音:声 かけたよ!
華:お母さん 今日レッスンじゃなかったの?
音:レッスンは明日。それ何? 野球のお勉強?ねえ この間 一緒にいた男の子って…。
華:出かけてくる。
音:どこ行くの? その子に会いに行くの?
華:そんなわけないでしょ。散歩。
音:あっ…あっ でも 華…。
●古山家・玄関先
華:もしかして 久志おじちゃん?
音:華 出かけるなら上着…。久志さん。
●古山家・居間
音:裕一さん もうすぐ帰ってくると思うんで少し待ってて下さい。
久志:あっ いや…これ 返しに来ただけだから。
音:歌わないっことですか?
久志:ああ。
音:どうして?
(ため息)
久志:同情されたくない。
音:同情?
久志:別に僕じゃなくてもいいでしょ。
音:裕一さん がっかりするだろうな。
久志:歌手は ほかにもいっぱいいる。
音:それ…大会本部の大倉さんも同じこと言ってました。
久志:えっ?
(回想)
大倉:佐藤久志ですか…。
裕一:僕が推薦するなら彼しかいません。
大倉:う~ん…上司が何と言うか…。先生を擁立するだけで精いっぱいでして…。ほかにも優れた歌唱力の方はたくさんいます。別の方で心当たりはないですか?
裕一:すいません。それでも僕は佐藤久志を推薦したいです。抒情性のある彼の歌声はこの曲にぴったりなんです。ほかのどの歌手よりも彼が向いていると思います。
大倉:あ~…ですが…。
裕一:彼がもし…彼がもし 戦時歌謡の歌い手としか捉えられていないのならば なおさらです。彼は皆さんが思う以上にいろんな引き出しを持った歌い手です。大倉さん どうか…どうかお願いします。
大倉:いや…先生 ちょっと あの…。あっ 先生 やめて下さい。
裕一:お願いします。
(回想閉じ)
音:裕一さん 必死にお願いしてた。最後は大倉さんも根負けして上司の方を説得して下さるって。羨ましかった…。裕一さんは久志さんのことを歌手として心底 信頼している。同情なんかじゃありません。裕一さんは久志さんの歌が好きなんです。
<<(戸の開閉音)
<<裕一:ただいま。
音:お帰りなさい。
裕一:ただいま。久志? えっ…来てくれたんだ。これ…楽譜…よ…読んでくれた?
久志:ああ。
裕一:どうだった?
久志:いい曲だと思う。
裕一:はあ~よかった。それじゃあ…。
久志:でも…今の僕には歌えない。
裕一:「夜更けの街」だって歌えたじゃないか。
久志:あれは…歌詞が自分と重なったから。でもこの曲は…。こんな希望にあふれた曲…歌う自分が想像できない。
裕一:久志 甲子園 行こう。今から行こう 甲子園!
●古山家・台所
華:えっ? また甲子園 行ったの?
音:うん。夜行列車で行くって さっき出ていった。
華:ふ~ん。
音:お父さんて ああ見えて野球に縁があるのよね。「大阪タイガースの歌」も早稲田大学の応援歌もお父さんが作ったし。
華:えっ早稲田? もしかして「紺碧の空」?
音:そう。よく知ってるわね。
華:たまたま。
音:フフフ…。
●大阪・甲子園球場
裕一:作詞した多田さんは16歳の時 試合中のけがで足を切断して甲子園の夢を失ったそうだ。もう二度と野球ができないという葛藤の日々を乗り越えて 多田さんはあの詞を書いた。自分にできることは未来ある若者を応援することだって。絶望を経験した彼だからこそあの詞を生み出せたんだと思う。多田さんと同じよう…君も絶望を知ってる。その原因を作ったのは…僕だ。戦時歌謡に君を誘った。久志…苦しめてしまって…本当に申し訳なかった。僕も…僕もどん底まで落ちた。でも…どん底まで落ちた僕たちにしか伝えられないものがあるって信じてる。戦争が終わって…またこのグラウンドで試合ができる時代になった! 選手もお客さんも…みんな楽しみに待ってる!僕たちも…多田さんの思い 形にして未来ある若者に 一緒にエール送ろうよ!勝った人にも負けた人にも 頑張ったね…頑張ろうね…一生懸命な姿見せてくれてありがとうって!久志…。君なら歌える。お前じゃなきゃ駄目なんだよ!
久志:♪「雲は湧き」
♪「光あふれて」
♪「天高く」
♪「純白の球 今日ぞ飛ぶ」
♪「若人よ いざ」
♪「まなじりは歓呼に応え」
♪「いさぎよし」
♪「ほほえむ希望」
♪「ああ 栄冠は君に輝く」
♪
♪「風をうち」
♪「大地をけりて」
♪「悔ゆるなき」
♪「白熱の力ぞ技ぞ」
♪「若人よ いざ」
♪「一球に 一打にかけて」
♪「青春の 賛歌をつづれ」
♪「ああ 栄冠は君に輝く」
●喫茶「バンプー」
ラジオ:「ピッチャー…投げた!」「打ちました!」
(歓声)
田中:すごか試合になっとうばい!
●闇市・久志が住む掘立小屋
ラジオ:「ランナー3塁 千載一遇のチャンスの場面」
●闇市・智彦のラーメン屋台
ラジオ:「ランナー走っています!」
♪「空を切る 球のいのちに」
ラジオ:「なおも続く攻撃…」
♪「かようもの 美しく匂える健康」
●古山家・居間
♪「若人よ いざ」
♪「緑こき 櫚梠の葉かざす」
●大阪・甲子園球場
久志:♪「感激をまぶたに描け」
♪「ああ 栄冠は君に輝く」
(場内の歓声)
(つづく)
※甲子園のシーンは宇都宮市の栃木県総合運動公園野球場(本球場)で撮影されました。
【栄冠は君に輝く】 歌:伊藤久男 作曲:古関裕而 作詞:加賀大介
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。