朝ドラ【おちょやん】第19週91話、終戦から3年 千代ちゃんたち家庭劇は地方を回りながら細々と公演を続けていた。そんな時、突然、熊田が現れて…。
「「みんな直ちに道頓堀へ戻ってこい」との鶴亀株式会社社長・大山鶴蔵のお達し。
かくして、道頓堀に戻った家庭劇の面々。鶴蔵は新しい劇団を作り、日本一の劇団にするように一平に命を下すが、こらまでの経緯から、簡単に返事しない一平。
一方、岡安では岡安の「岡」に福富の「福」で岡福という名前のうどん屋を始めていた。
そして須賀廼家万太郎は、喉のガンを患い、今週もよろしくお願いいたします。
【おちょやん】セリフ書き出し第19週91話
漆原:千さん 大丈夫ですか?
天晴:息 切れてますやん。
終戦から3年 千代ちゃんたち家庭劇は地方を回りながら細々と公演を続けておりました。
じきですよ もう。見えてますやん もう。
(騒ぐ声)
千之助:幸太郎…。
時には お芝居をやる場所はと思われへんとこで公演することもありました。
千之助:こないに寂しいもんだとは知らなんだ。幸太郎…。
(一平の泣き声)
千之助:ああ? 誰じゃ わしの代わりに泣いとんのは。木の後ろやな。待たんかい。待て どこじゃ…追い抜いとるわい。
(笑い声)
客:いや~ええもん見してもらいました。よかった よかった。
復員兵:あやこ~!
爺さん:ばあさん 龍之助が…。
●楽屋
千代:あとちょっとだすで。
一平:やられた! 五厘屋に金も芝居道具も全部 持ち逃げされた。
一同:え~!
天晴:どないすんねんな!
五厘屋いうのは 今で言う仲介屋 芸能ブローカーみたいなもんです。インチキくさいのもぎょうさんおって お金をだまし取られることもようあったとか。
香里:無理やわ。2日も食べてへんのやで。
一平:俺だけが悪いんか?
千之助:芝居どうすんねん あほ。
一平:何で俺だけ…。
千之助:いたたたたたっ! うわ~! 何してんねん お前!
千代:前にやりましたやろ「狸の嫁入り」だす。
千之助:あれはウケへんわ あほ。
千代:大事おまへん。絶対面白おます!
千之助:いや ウケん!
天晴:千さん やるしかない! やしまひょ!
香里:あんた ちょっと…。あんたのせいやろ。
徳利:いけ いけ いけ!
千代:よっしゃ ほな 行きまっせ!
よっしゃ! さあ 行こう! さあ 行きましょう 千さん!
行きますよ。はいはい。
行きましょう!
♪
千之助:こないにウケへんことあるか。
千代:すんまへんだした。
千之助:何や お前もポンポコせんと はけたやろ。気付いたら わし一人やないか。最後やろ ポンポコって。それぐらいやれ あほ。
…と まあ こんな具合に千代ちゃんたちは ドサ回りをそれなりに楽しんでおりました。
香里:これのどこが楽しんでんねんな!
ひゃ~!
徳利:香里。
香里:おなかすいて 目ぇかすんできた…。もうすぐお迎えが来るわ きっと。ハッ…こらまた 熊田さんによう似たお迎えやこと…。
熊田:熊田や。
香里:ええっ!
千代:ほんまに熊田さんや。えっ 何でこないなとこに?
熊田:あんたらを捜してましたんや。「みんな直ちに道頓堀へ戻ってこい」と 大山社長のお言葉!
徳利:大山社長のお言葉でしょ。
熊田:せや。
●新えびす座・舞台
というわけで 千代ちゃんたちは道頓堀に帰ってきました。空襲 そして終戦。あの時から3年という年月が流れました。
徳利:たった3年でよう こないな劇場を…。
漆原:さすが大山さんやな。
鶴蔵:ああ 皆 元気そうで何よりやな。
千之助:そちらさんは えらい老け込みはってよ。ぼちぼち引退した方がええんとちゃうか。
鶴蔵:まあ まあ まあ そないつれのうせんといてくれ。おい。
熊田:この3年 道頓堀を芝居の街として復興させるべく 大山社長指揮のもと やっとこの新えびす座も完成して また昔みたいに大勢のお客さんを呼び戻す絶好の機会を迎えました。そこで これからの時代を担う新しい劇団を発足させます。その名も…鶴亀新喜劇。我々はこの新しい劇団にあんたらを迎え入れたい思てる。
鶴蔵:座長は2代目天海天海 お前や。
熊田:悪い話やあれへんやろ。
天晴:また鶴亀に入れてもらえるいうことですか?
熊田:そうや。
香里:お給料も出してもらえんの?
熊田:もちろんや。社長はあんたらのこと ちゃんと考えてくれてはんのやで。感謝しいや。
一平:それは虫がよすぎますわ。どないな事情やったにせよ 俺らを一方的に切り捨てたのは大山社長 あんたや。それが今度は新しい劇団に入れやて? そないキセルのたばこみたいに 入れたりほかされたりしたらかないませんわ。
熊田:おい 一平!
●岡福うどん店
ん~。
ああ~半年ぶりや。しみるなあ。
千代:お出汁もええあんばいやわ。もう来る度におしなってんのと違う?
宗助:そやろ。やっとええお昆布が手に入るようになってきたさかいな。
みつえ:何言うてんの。お父ちゃん 何もしてへんやんか。
シズ:旦さん 油売ってんと うどん売っとくなはれ。こちらさんにお酒。
宗助:はいはい。また怒られてしもた。
みつえ:一福 きつね 2つ追加や。
一福:はい!
みつえ:返事だけはええな。
ここは元岡安のあった場所で シズさんとみつえちゃんが始めた岡福いう うどん屋さんです。岡安の「岡」に福富の「福」で岡福。ええ名前やな。
漆原:いや しかし 大山社長も相変わらずやな。
徳利:あの偉そうな物言い 腹立つわ。
香里:けど お給料貰えんねんで。おっきい舞台で芝居できんねんで。悩むことあれへんやないの。
回想・鶴蔵:どこよりも大勢の客呼んで 道頓堀一 いや日本一の劇団にしてもらわな やる意味などあらへん。一平 お前の夢もそうやったんちゃうか。もういっぺん あのころの道頓堀を取り戻す。ほんで次の時代につなげなあかんのんや。
千代:うちはこの道頓堀がもっぺん あのころみたいに戻れんねやったら ちょっことでもその力になりたい。ここでまた芝居がでけんねやったら鶴亀に利用されようが大山社長に腹立とうが構へん。
みつえ:はい 親子丼 お待っとおはん。お待っとおはん。
徳利:えっ 頼んでへんで。
みつえ:お出汁と卵の分量 いろいろ変えて こしらえてんのやけど いまひとつ決まれけんさかい 試食して意見聞かしてもらお思てな。
徳利:ええんかいな オホホホ。
千代:みつえも頑張ってますな。
宗助:せやろ。
シズ:今は安うて おいしゅうて おなかいっぱいになるもん こしられな 商売になてへんさかいな。
みつえ:千之助さんは? お年寄りの意見も聞きたかってんけど。
天晴:あ~多分 万太郎さんとこやな。
香里:またケンカ吹っかけに行きはったんやわ きっと。
●鶴亀株式会社・稽古場A
(笑い声)
千兵衛:誰や あんた。
千之助:われこそ誰じゃ おお?
一二九:千之助さん いつ道頓堀に?
千之助:おう 久しぶりやないか。参ったわい。大山のじじいに 新しい劇団作るさかいに どないしても戻ってきてほしいて泣いて頼まれてのう。やっぱり 鶴亀にとって必要なんは うちらっちゅうこっちゃのう。大山のじじいも わしらがおらんようなって やっと気付きよったわい。何とか言うてみい。悔しゅうて悔しゅうて声も出えへんか?
一二九:千さん。万太郎さんは…。
千之助:何 笑てんじゃ。何してんじゃ それ。何じゃ。 邪魔くさいのう 何じゃ。ああ。まる…輪「わ」や。
(でんでん太鼓の音)
千之助:4…「し」。
(でんでん太鼓の音)
千之助:わ…「わしは」や。
(でんでん太鼓の音)
千之助:何や それ。竹の子か。赤ん坊 赤ちゃん…。子…「こ」。
(でんでん太鼓の音)
●うどん屋「岡福」
天晴:何や けったいやな。
漆原:ん?
天晴:いや 大山社長は新しい劇団作んのに 何で万太郎一座やのうて わてらを呼びはったんやろ。どない考えても最初に声かけんのは万太郎一座やろ。
千代:それは…何でだすやろ。
天晴:何やねんな。
シズ:あなたら 何も聞いてはれしまへんのか?
●鶴亀株式会社・稽古場A
千之助:「わ」。7「な」。
(でんでん太鼓の音)
千之助:「い」。
(でんでん太鼓の音)
千之助:わ し は こ え が も う で …。 「わしは声がもう出ない」か。
(でんでん太鼓の音)
千之助:じゃかましわ おら! 邪魔くさいのう。ほんなもん口で言え。…って言われへんか 声出えへんかったら。ハハハッ。しょうもない嘘言うな ボケ。
万歳:嘘やあれへん。万太郎さんは ほんまに…。
(すすり泣き)
千之助:もうええ言うてんねん コラ! しゃっべってみいや ああ? しゃべってみいて!
●うどん屋「岡福」
シズ:喉のガンやそうや。もう芝居続けはんのは 無理やろな。
(つづく)
●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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