朝ドラ【おちょやん】第17週83話、昭和19年2月、冨川福助が出征。その数日後には芝居茶屋「岡安」がその60年余りの歴史に幕を下ろした。
そして1年後の昭和19年2月、B29爆撃機による空襲が何日も続く中、防空壕で一平と千代が出会ったしゃべくり漫才師の花車当郎。
鶴亀家庭劇の百久利にも赤紙が来て、
百久利さんが戻ってきた時のために うちらは家庭劇守らな。
という千代に対して、一平が家庭劇は解散と告げて明日に続くです。
しゃべくり漫才師の花車当郎の実在モデルは、花菱アチャコだと言われています。
【おちょやん】第17週83話セリフ書き出し
●福富楽器店前
千代:これでええ。フフフ。
一平:ええか。ほな。 12の3。
(シャッター音)
福助:行ってまいります。
千代:福助~!
昭和19年2月 福助君は出征していきました。そして その数日後…。
●岡安
シズ:おはようさんだす。
近所の人:おはようさんだす。
岡安のおしまいの日がやって来ました。
シズ:あんたら…老けたなあ。
(笑い声)
富士子:堪忍しとくれやす。今日でしまいや思て 神妙な面持ちでいてますのに。
シズ:わても老けました。こないなるまで よう続けてこられたもんだす。それもこれも あんたらが支えてくれはったおかげだす。
宗助:ご苦労やったな。
シズ:おおきに。富士子は昔っから勝ち気でよう口答えもする子やったけど あんたから教えてもたっらことはようけあった。頼りになるお茶子頭さんだした。節子は来た時から何でもできるお茶子やったなあ。要領よすぎて よそさんでは煙たがられることもあったかも分かれへんけど あんたは仕事熱心なだけだす。今までよう働いてくれました。
節子:みんな聞いたか?ご寮人さんはちゃんとうちのこと分かって…。
(すすり泣き
シズ:かめ あんたはいっつも こっそりお釜のごはんを…。
かめ:ご寮人さん わてはまだ これからもいてますのやさかい…。
シズ:あっ…せやったな。ハハッ。
玉:おおきに。
シズ:あんた来た時は どないしようもあれへん泣き虫やったけど…見違えるほど たくましゅうなりなはった。
玉:見捨てんと 使てくれはったおかげだす。
シズ:特に千代が来てからは しっかりしたな。玉はあんたの面倒 よう見てくれましたやろ。
千代:はい。
シズ:それがな…玉自身をも 成長さしましたんや。
玉:おおきに。
シズ:あんたらが この岡安の歴史そのものなんだす。その岡安ののてんを下ろさなあかんのは みんなわての力不足だす。どうか堪忍しとくなはれ。
富士子:そんな やめとくれやす。
節子:謝らなかなんのは うちらの方だす。岡安 支えきれんと ほんまにすまんことだした。
シズ:せやな。ほな わてら みんなのせい いうことでよろしわな。
富士子:はあ…。
シズ:はあ~これで肩の荷が下りました。話は異常だす。ほな みんな ちゃっちゃと出てってな。何もたもたしてますねん。あんたらはちゃっちゃとどこへでも行って また次の幕 開けなはれ。はよ行った行った。
♪
富士子:ほんまだすか?
シズ:行った行った行った…。長いこと お疲れさんやったな。ほな。
♪
シズ:芝居茶屋に湿っぽいのは似合えへん。
♪
節子:ご寮人さんらしいなあ。
富士子:ほんまや。
千代:皆さんは これからどないしはんのだす?
富士子:うちは亭主の田舎に行くことにした。実家が農家やさかい それ手伝うわ。
節子:うちは東京や。どうせ天涯孤独の身やし 気楽やよって。
玉:うちはしばらくは大阪の実家にいてるさかい。寝たきりのおばあちゃんの面倒 うちが見たげんねん。
千代:寂しなります。
富士子:ご寮人さんと旦さんのこと よろしゅうな。
こうして芝居茶屋 岡安は その60年余りの歴史に幕を下ろしました。そのあとも戦況はどんどん悪なって ひとつき後には全国の大劇場が次々と閉鎖されてしましました。えびす座と鶴亀座も例外ではなく…。
●えびす座・舞台
熊田:そこの袖幕も きっちり ほこり取って。また使うねさかい。なっ。
とうとう道頓堀の灯は消えてしまいました。そして昭和20年2月。B29爆撃機による空襲が何日も続いていました。そんな中でも家庭劇は辛うじて開いている小さな芝居小屋を転々と渡り歩きなんとか公演を続けておりました。/span>
●鶴亀家庭劇・稽古場
徳利:狭いわ 床抜けるわで…。
千代:床抜けたんは 劇場のせいやのいうて 徳利さんが肥えはったせいちゃいました?
<<徳利:このご時世に どないしたら肥えんねん。
徳利:年中 腹ペコやっちゅうのに。
<<徳利:思い出させんといて。
<<漆原:せめて 次はもうちょっとマシなとこでやりたいな。
一平:お疲れさん。
お疲れさん。
お疲れさんです。
千代:何や はよおましたな。次の芝居小屋 決まりましたんか?
一平:ああ いや まだや。
千代:それで熊田さんに呼び出されたんと違いますの?
一平:ああ 別の話やったわ。
ルリ子:大丈夫?
香里:あかん。公演であちこち行かされるし 夜は空襲で何べんも起こされるし もうしんどい。
小山田:ほんまに日本は大丈夫なんやろかなあ。
百久利:大丈夫に決まってますやんか。
千之助:空襲がなんぼのもんじゃ あほ。鬼畜米英が来よっても 皆 わしが笑い死にさしたるわい。
百久利:ハハハ。
千代:さすが 千之助さんだす。
百久利:よっ 師匠 日本一!
(空襲警報)
空襲警報発令!
(空襲警報)
天晴:警報や。みんな逃げよか。
(空襲警報)
百久利:千さん?千さん?
千代:千之助さん!
徳利:千さん!
一平:みんなも急げ!
香里:どうせまた通り過ぎるだけやて。
一平:千代 お前も急げ!
千代:火 消さな。一平。
(空襲警報)
●防空壕
千代:(小声で)みんなとはぐれてしもた。だんないやろか。
一平:(小声で)すぐに避難してきたさかい心配あれへん。
おばちゃん:し~っ!
(赤ちゃんの泣き声)
男:静かにさせ!敵に聞こえてまうやろが!
母親:すんまへん…。
(泣き声)
男:やかまし言うてるやろ!
女:やめときて 男のくせにみっともない!
男:何やと!?
女:何や!?
千代:みんな 落ち着いて…。
男:おばはんは黙っとれ。
女:聞こえるはずあれへんやろ!
男:聞こえてます!
女:聞こえてへんわ!
当郎:花子…花子やろ。会いたかったで。
千代:えっ…花子ちゃいますけど。人違いだす。
当郎:いや 花子は人ちゃう。昔 飼ってた牛や。
千代:誰が牛やて?
当郎:あっ よう見たら ちゃうな。花子によう似た牛さんや。
(笑い声)
千代:あっ! そういうあんたは次郎…次郎やな。
当郎:いや 誰や 次郎て。ははあ~次郎も牛やっちゅうオチでんな。その手には乗らしまへんでぇ。
千代:牛やあれへん。次郎は昔飼うてた ヒキガエルだす。
(笑い声)
当郎:ヒキガエル! 僕のどこがヒキガエルやねん!
千代:その声 次郎にそっくりや。
当郎:えっ…そうでゲロか。いや ヒキガエルがしゃべるはずあれへんがな。そんなん おるんやったら連れといで。
千代:それはでけしまへん。次郎はもう死んでしまいましたんや。
当郎:そうか…そら 悪いこと言うたな。で 何で死んだんや?
千代:牛の花子に踏み潰されて…。
当郎:君のせいやないか!
(笑い声)
女:あんたら おもろいなあ。あほみたいなこと話さんといて。
当郎:誰があほや。あっ? そういうあんたはタコ吉やないか。
千代:ああ ほんまや!
●道頓堀・街中
千代:けったいな おっちゃんだしたな。
一平:あの人はな しゃべくり漫才師の花車当郎や。
千代:あの人が? どうりで話がうまいはずだすな。 おかげであない久しぶりに笑い声聞けた。やっぱし ええもんやな。
一平:なあ 千代。
千代:何やの。
一平:いや 顔 汚れてんで。
千代:それ はよ言うて。
●鶴亀家庭劇・稽古場
百久利:今度こそ 皇国のために命をあささげ戦うてまいります!
百久利さんにも赤紙が来ました。
千代:必ず戻ってきとくなはれな。うちら ここでずっと待ってますさかい。
百久利:おおきに。須賀廼家百久利 行ってまいります。♪「東洋平和のためならば なんで命が惜しかろう!」
♪
千代:よっしゃ ほな お稽古しましょか。百久利さんが戻ってきた時のために うちらは家庭劇守らな。なっ?
小山田:せやな。
一平:すまん…あかんのや。家庭劇は…解散する。
(つづく)
●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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