朝ドラ【おちょやん】第16週76話、昭和12年の年の瀬(12月)テルヲさんが亡くなってから5年がたち 千代ちゃんも30歳になりました。
この年の夏に始まった志那事変 いわゆる日中戦争に日本軍は勝ち続け 12月になってもその勢いはとどまることを知らず 日本中が勝った勝ったの喜びに沸き立っておりました。
鶴亀家庭劇の演目「頑張れ!集配婆さん」は戦争に行った孫の代わりに郵便の集配係を志願したおばあさんが活躍するというお話です。
時勢とうまいこと合った愛国ものの芝居はお客さんに大好評で千秋楽まで連日満員でした。
という状況の中で、松島寛治という身寄りのない少年が天海家に居候することになり、【おちょやん】16週の始まりです。
ここで思い出すのが同じ大阪が舞台の【まんぷく】。
<1938年 昭和13年の大阪です。この前の年に日中戦争が始まり 世の中は軍需景気に沸いていました>
という芦田愛菜ちゃんのナレーションから始まり、
<この福ちゃんがこの物語の主人公です。名前は今井福子。この春 高等女学校を卒業して大阪市内のホテルに就職することが決まっていました>
というあの朝ドラを思い出しながら【おちょやん】を見てみるのも面白いかもしれません。
【おちょやん】第16週76話セリフ書き出し
●天海家
千代:一平 今日は岡安に用あるさかい 先行くで。
一平:ん~。
<<千代:一平~。一平!
昭和12年の年の瀬 テルヲさんが亡くなってから5年がたち 千代ちゃんも30歳になり…ました。
千代:行ってきます。
この年の夏に始まった志那事変 いわゆる日中戦争に日本軍は勝ち続け 12月になってもその勢いはとどまることを知らず 日本中が勝った勝ったの喜びに沸き立っておりました。
●福富楽器店前
一福:ブルルルルルル…。前方に敵機発見 撃て!
2人:ダダダダダダダダダダ~!
千代:うっ ううっ…やられた~。アハハハハハ。ええなあ 一福。おじいちゃんに遊んでもろて。
一福:遊んでんのちゃう。 お国守るために戦うてんねん。行くで 宗助1等兵。
宗助:はっ 隊長殿。
2人:ブルルルルルルル…。ブルルルルルルルル…。
●岡安・床の間
千代:えらい長いことかかってしもて ほんまにすんまへんだした。
シズ:何べんも言うてますやろ。あの時のことは わてが勝手にやったこどだす。
回想・シズ:200円おます。二度とこの街に足踏み入れんこっちゃ。
シズ:あんたが返す必要なんかあれへんのやで。
千代:お父ちゃんが借りたお金はうちが返すのが筋だす。ほんまに今までありがとさんでございました。
シズ:お礼言わなあかんのは こっちや。あんたらが今やってる「頑張れ!集配婆さん」えらい好評らしおますな。
千代:はい おかげさんで。
シズ:うちにも お客さんようけ来てくれはってな えらい助かってますのやで。
千代:やっぱり 今は戦争もん 扱うたお芝居がえらい人気みたいで。
シズ:ボンやんにもようお礼言うといてや。
千代:はい。
シズ:あんたら うまいこといってますのか?
千代:まあ 相変わらずだす。子供には恵まれへんけど それはそれで2人で楽しゅうやってます。うちにとったら劇団のみんなが手のかかる子供みないなもんやし。
シズ:フフ。
●えびす座・楽屋
千代:小山田さん 小道具の手拭い 洗ときましたで。
小山田:いや~これはかたじけない。
千代:徳利さん いつも間違えるあっこのセリフ 今日はちゃんと確かめといとくなはれや。
徳利:大事あれへんて。
千代:ほんまだすか?
百久利:おはようさんでございます。
千之助:あ~…。
千代:千之助さん これ食べとくなはれ。
千之助:何でじゃ。
千代:酔い覚ましだす。今日も二日酔いだすねやろ お酒臭い。
千之助:はあ~。
千代:うっ! もう~。
千之助:ぱっ!
(笑い声)
千之助:ぱっ!
千代:ほな 皆さん 千秋楽も気ぃ抜かんと頑張りましょ。
一平:おい 千代 千代。足袋バラバラやで。
千代:あっ…あっ!
香里:あんたが一番抜けてるやん。
千代:ほんまだすわ。すんません。
千之助:あほ。
百久利:ハハハハ。
千代:もう~! はいはい。
●えびす座・舞台
この「頑張れ!集配婆さん」は戦争に行った孫の代わりに郵便の集配係を志願したおばあさんが活躍するというお話です。
千之助:かよわい年寄りに何してんだ~!
一平:めちゃくちゃ強いがな!
千之助:おっきな声出して!
一平:あんたや!
千之助:2人でちゃんと落ち着きましょ。局まで行ったら あんたの手紙はちゃ~んと返したるさかいな。そやそや ああ 大事なのが落ちた。それまでな この手紙でも読んで気ぃ静めなはれ。
一平:誰の手紙やねん。
千之助:お国のために戦地に行ったわての孫からや。まあ 読んでみなはれ。
一平:「おばあ様 お健やかにお過ごしでしょうか。私は今 遠く離れた大陸の戦地でこの手紙をしたためております。お国のため家族のため たとえこの身は大陸の戦地に朽ちるとも必ずや戦果を上げてみせると誓います」。
百久利:そちらも銃後の守りを怠ることなく共に力を合わせてこの戦争を勝ち抜きましょう。その日までどうかお元気で。おばあ様 万歳。 大日本帝国 万歳!
百久利と一平:万歳! 万歳!
百久利:万歳! 万歳! 万歳!
時勢とうまいこと合った愛国ものの芝居はお客さんに大好評で千秋楽まで連日満員でした。
百久利:万歳! 万歳!
(柝の音)
●えびす座・舞台袖
鶴亀座従業員:お疲れさまです。
徳利:あっご苦労さんでございます。 いや~ええ千秋楽やったな。
千代:そないなこと言うて またおんなじとこ セリフ間違えてはりましたで。
徳利:あれ?分かった?
●えびす座・楽屋
千代:ほんま調子のええことばっかり…。あっ…泥棒~!
寛治:いやっ…違う違う違う! ちゃいます! 泥棒やありませんて!
百久利:ほな その手に持ってるもんは何や?
寛治:散らかってたし 片づけたろ思て。
百久利:嘘つくな!何で知らんやつが勝手に掃除してんねん。
寛治:それはですね…。
熊田:みんな 千秋楽お疲れさん。
千代:あって熊田さん 楽屋泥棒だす! 警察呼んどくなはれ。
熊田:寛治。おい ちゃんと挨拶し。
寛治:え~松島寛治いいます。前の劇団では楽屋掃除すんのが日課やったさかい この きったない楽屋見て つい掃除したなってしもて…。堪忍してください。
百久利:でけへんわ!
ルリ子:悪かったわね 汚い楽屋で。
天晴:もしかして この泥棒 鶴亀の役者でっか?
寛治:だから泥棒ちゃうて。ほんで役者でもありません。僕はただの雑用係です。
熊田:寛治のお父さんは新派やってる一座の座長さんやったんやけど ついこないだ亡うなってしまいはってな。ほかに身寄りらしい身寄りがいてへんのや。すまんけど あんたらでひとつきほど面倒見たってほしんんや。
千代:うちらでだすか?
天晴:ほな 新派のもんに預けた方がええんとちゃいます?
熊田:それが 座長が死んで解散してしもてな みんな それどころやあれへん。せやさかい 頼むわ。年明けには遠縁のもんが迎えに来ることになってるよって。
一平:そないなこと急に言われましても…。
熊田:よろしゅう頼むわ。大山社長からのお言葉や。
百久利:またか。
●天海家
千代:ほな 寛治君は2階の部屋 使て。
寛治:おおきに。こない狭いとこに押しかえてしもて えらいすんません。
千代:ハハハ。
一平:狭うて悪かったな。
千代:正直やなあ。
一平:おい ほんまにうちで面倒見んのんか。
千代:しゃあないやんか。
(回想)
天晴:すまんなあ 男やもめの1人暮らしやさかい 泥棒の世話はできんな。
徳利:いやいや うちはあかんで。嫁はんと子供5人でもうキュウキュウや。
ルリ子:私も間借りしている身だから 無理ね。
香里:ごめんな~。彼がいつ来るか分かれへんのよ。
(回想閉じ)
千代:漆原さんはご両親のお世話してはるし 千之助さんと百久利さんのとこやと 悪い遊び覚えてしまいそうやし 小山田さんは…。
(そしゃく音)
千代:ちょっと不安やん。
一平:ああ…。
千代:なあ うちしかあれへんやろ。
一平:俺は台本書かなあかんねんで。あいつおったら 気ぃ散ってしゃあないわ。
千代:ほっとかれへんやん。お父ちゃん亡うなって あの年で一人になってしもたんやさかい。 うちらとおんなじやんか。
(階段を下りる音)
寛治:お芝居の台本 全部 座長さんが書いてはりますの?
一平:お前 勝手に書斎…。
寛治:すごいですね。どれもこれも面白うやし。読んでもよろし?
一平:あんま 汚したらあかんで。
寛治:おおきに!
一平:まあ ひとつきぐらい我慢したるわ。
千代:フフッ…おおきに。
一平:ああ。
♪
一平:おう えらい豪勢やな。
千代:育ち盛りやさかい しっかり食べさしたろ思て。
寛治:千代さん ごはん運んでもよろしですか?
千代:ええで。助かるなあ~ どっかの誰かと違て。
寛治:あっ!
千代:寛治。
寛治:やってもた。
一平:何してんねんな。
寛治:すんません。
千代:だんないか?
寛治:あっ 熱っ!
一平:触らん…どけ どけ。
千代:ケガあれへんか?
寛治:はい。どないしよう。
♪
千代:はい。ほな 頂きます。
寛治:僕のせいで ごはん こんだけに…。
千代:もう そないなこと気にせんかてええて。男やろ 泣いたらあかん。そや うちのもよかったら食べ。いっぱい食べな大きなられへんで。なあ 一平。
一平:うん。
千代:なあ 一平。
一平:分かった分かった。
寛治:よろしぃんですか?
一平:ああ。
千代:浅慮せんと はよ食べ。
寛治:ほな…頂きます。
千代:何や 嘘泣きかいな。
寛治:嘘やあれへん。ほんまに悲しかったんや。おなかすき過ぎて。
千代:大人からこうたら承知せえへんで。うちのごはん返して。
寛治:うん…。
(むせる音)
千代:あほや…。
一平:何や もう。
千代:だんないか? 一平 水。
一平:何やの 汁でも飲んどけ お前。
千代:だんない? 何してんねんな 一平 水。
♪
千代:ちゃんとシワ伸ばして干すんやで。
寛治:こない?
千代:ちゃう もっとこないして。せやけど 昨日の嘘泣きはなかなかのもんやったで。やっぱり お父ちゃんの血なんやろな。あんた ほんまは役者やったことあれへんの?
寛治:僕にでけるはずあれへんやん。やりたいとも思えへん。芝居は見んのに限る。
千代:うちも初めはそやった。懐かしなあ。知ってるか? 高城百合子いう きれいな女優さんがおってな…。寛治! 戻っどいて! この卑怯者!
寛治:行ってきます!
<<(話し声)
一平:騒がしなあ…。
<<寛治:行ってきます!
<<千代:コラ 待ち! ごんたくれ!
千代:子供いてたら 毎日 こないなんやろか…。
(つづく)
●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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