【おちょやん】セリフ書き出し第12週56話|ルリ子「私には分かるわ。まさにリビドーとタナトスね」

朝ドラ【おちょやん】第12週56話、みつえと福助の祝言からひとつき後の昭和4年2月、鶴亀家庭劇では次の公演の稽古が始まっていた。演目は以下の通り。

第一 若旦那のハイキング

第二 逃げた鴨

第三 隣の婆さん

前座の「若旦那のハイキング」を稽古中、警察に検閲を受けた結果、抱き合う芝居が削られたために苦悩する一平。

俺がこの脚本に込めたんは 理屈や秩序を超えたことにある人間の本性 衝動的欲動なんや!

それを聞いたルリ子が「私には分かるわ。まさにリビドーとタナトスね」で、分かる人には分かるフロイトのお話。

そして、道頓堀界わいではボヤ騒ぎが続出中で、千代がぶつかって謝った際に「だんない だんない」と喋った若い男がヨシヲで、明日に続くです。

【おちょやん】第12週56話セリフ書き出し

福助:ああ…いっぱい飲んだな。

みつえちゃんが福助君とこに嫁いで ぼちぼちひとつきが過ぎようとしています。

●福富楽器店

福助:ここ こない押さえるやろ。ほんでフ~って吹いたら音出るわ。

(気を吹き込む音)

みつえ:思てたより難しいなあ。

福助:そやろ。

(笑い声)

宗助:ちょっと ひっつき過ぎちゃうか。

福助:口の形が違うんや。こないして。

みつえ:こない?

福助:こないや こない。

宗助:みつえ! コーヒーお代わり!

(OP)

みつえ:毎日毎日 そない油売ってたら お母ちゃんに怒られんで。

福松:まあ ええやないか。宗助さんかて寂しいんや。

みつえ:ほんで あんたは何でさっきから そない怖い顔してにらんでんの。

千代:にらんでる? 真剣な顔やん。

みつえ:分かりづらっ。

千代:実はな…。

(回想|3時間前 鶴亀株式会社・稽古場)

一平:次の公演のトリは千さんにお任せしよ思います。その代わり 俺は前座で自分の力試さしてもらいます。よろしですか?

千之助:やったらええやないか 邪魔くさい。

一平:おおきに。

天晴:話は出来たんか?

一平:これや。

徳利:「若旦那のハイキング」。

一平:商売敵の家柄のせいで結婚反対されてる若旦那といとさんが ハイキング行った先で心中しようと決意すんのやけど それは若旦那がいとさんの気持ちを確かめようとした嘘やったっちゅう色恋噺や。

天晴:あ~。

漆原:それ面白そやなあ。

千代:それ ひょっとしたら…。

一平:そや。みつえと福助見てて思いついたんや。若旦那が俺で 相手のいとさんが…。

香里:ほな うちが。

熊田:ああ 香里はあかん。きれいどころの女優は前座やのうて トリで売り出せっちゅう大山社長のお言葉や。

香里:あのおっちゃん よう分かってるやんか。

一平:ほな しゃあない 千代で頼むわ。

千代:何やの しゃあないて。何やったら うちがトリに出よか?

熊田:香里や。千之助さん 頼んます。

千之助:どうでもええわい ほんなもん。

香里:ごめんなあ 何せ 社長命令やさかいなあ。

(回想閉じ)

千代:ちゅうわけで2人見て 役作りの参考にさしてもらお思て来たんだす。

みつえ:もう困るわあ。勝手にそないなことされたら。なあ?

福助:えらい うれしそやけど。

(笑い声)

菊:みつえ。あんた ぼちぼち 晩の支度せなあかんのと違うんか?

みつえ:はい お義母さん。

菊:うっとこは 岡安と違て 女中はいてへんのやさかい 遊んでる暇はあれしまへんで。
みつえ:すんまへん すぐに。

福助:お母ちゃん。みつえは遊んでたんとちゃうで。楽器のこと勉強してたんや。嫁いびりせんといて。

菊:何だすて!?

みつえ:あんた! 

福助:えっ? えっえっえっ?

みつえ:お義母さんにそないな口利いたらあかん。

福助:え~っ?

みつえ:お義母さん 今日もお料理教えとくなはれ。お義母さんが引き継いできはった冨川の味 うち1日でもはよ覚えたいんだす。

菊:ええ心掛けやや。ほな こっちおいで。

みつえ:はい。

菊:ほんま男どもいうもんはな。

みつえ:ほんまだすなぁ。

福助:何で僕が悪者になんねんな。

福松:福助 それが結婚や。

宗助:結婚と書いて忍耐と読む。

福松:よっしゃ 今日はジャズでも聴きながらみんなで語り合お。

千代:うち 帰ります~。

椿:気ぃ付けや おちょやん。近頃 何や物騒やしな。こないだもボヤ騒ぎあったやろ。

(回想)

<<百久利:えらいこっちゃ!

ひとつき前 みつえちゃんと福助君の祝言の日に えびす座でボヤ騒ぎがありました。
  
百久利:えびす座が火事~!

天晴:待て。

千代:すんまへん。

ヨシヲ:だんない だんない。

幸い ボヤで済んだものの 結局 誰の仕業か分からず 道頓堀は不穏な空気に包まれていたのです。

●岡安・帳場

千代:ただいま戻りました。

シズ:旦さん また福富に行ってはったんやて?しょうないな。誰がお嫁に行ったんか分かれしまへん。

千代:ほんまだすなあ。

シズ:みつえは元気にしてますのか?

千代:はい。菊さんとも仲ようやってはりました。

シズ:ほうか…。まあ 自分で選んだ道や。泣いて戻ってきても知ったこっちゃあれへんねけどな。

かめ:シシシシシ…。あれでほんまはず~っと気にしてはんのやで。けど相手は福富やし 行くに行かれへんよってな。

シズ:かめ。

かめ:へえ。

シズ:はよ 晩の用意しなはれ。

かめ:へえ。

シズ:あんたらもちゃっちゃとし。

3人:へえ。

一平:ああ 千代 ちょうどええとこいてた。ちょっとええか?

●岡安・一平の居候部屋

一平:セリフ変わってしもたさかい 写しといて。

千代:また千之助さんに ?

一平:そやない…検閲や。

このころのお芝居や映画は警察にあらかじめ脚本を提出して検閲を受け 上演の許可を貰わなければなりませんでした。博打や暴力 男女の破廉恥なあいびきなど 警察が不適当と判断するものはことごとく禁じられていたのです。

千代:最後 2人で抱き合うのも のうなったん? ええ芝居のとこやったのに もったいないなあ。ほんまにええの?これで。

一平:ええも何も それでやるしかあれへんねん。

この「若旦那のハイキング」というお話 もう少し詳しくご説明いたします。大阪船場のとある所に長年いがみ合ってる2つの大店がありました。大店の若旦那 礼一郎とその商売敵の家の娘 若子はお互いにほれ合い 結婚の約束をいたします。争うてきた家柄の2人が結婚してもうまくいくはずがない。すぐに離縁するのがオチやと親兄弟から猛反対されてしまいます。礼一郎は若子の気持ちを確かめるためハイキングに誘い そこで心中しようと持ちかけます。お酒に毒が入っていると偽って2人で飲もうとする場面です。

●鶴亀株式会社・稽古場

千代:礼一郎さんとやったら 喜んで死にます。

一平:死んでしもたら何もかも のうなんのやで。

(コップが落ちる音)

千代:うっ…うっ…。けったいやなあ ちょっとも苦しいことあれへんわ。

一平:お前の気持ち よう分かった。よう分かった! 堪忍 わて 嘘ついてたんや。毒なんか入ってへん。わてら ずっと一緒や。お前をもう離さへんで!

(小山田のそしゃく音)

一平:こんなんでは何も伝われへん。

千代:検閲で肝心な抱き合うとこ 削られてしもたしなぁ。

一平:俺がこの脚本に込めたんは 理屈や秩序を超えたことにある人間の本性 衝動的欲動なんや!

百久利:今 何言いました?

徳利:俺が分かるはずないやろ。

天晴:まあ 言うたら愛やな。愛。

百久利:それ ほんまに分かってます?

ルリ子:私には分かるわ。まさにリビドーとタナトスね。

小山田:ブドウとナス?

千之助:さあ もうええやろ。おい トリの稽古の邪魔じゃ。

香里:よっしゃ 頑張るで。

百久利:千さん どっからいきましょか。

●岡安・勝手口

一平:若子 わてと死んでくれ…。若子 わてと死んでくれへんか。

千代:本気だすのか? 礼一郎さん。2人でやった方がええやろ。うちかて 香里さんに負けてられへん。この芝居で大山社長のこと見返したらな。正直言うたら 好きな人とやったら死んでもええて思う気持ち うちにはよう分かれへん。みつえと福助見てても 幸せそうでよかったなあ羨ましいなあて思うけど どっかで苦しなんねん。うちは一生あないなふうになられへん気ぃして。けど…おんなじくらい大切なもんやったらある。

一平:何やねん。

千代:弟のヨシヲや。ヨシヲがどっかにいてるさかい うちは今日まで生きてこられた。もしヨシヲに一緒に死んでくれ言われたら うちは死ねる。そないな気持ちでこの若子いう役 演じてみよ思てる。

そしていよいよ鶴亀家庭劇の初日です。

第一 若旦那のハイキング

第二 逃げた鴨

第三 隣の婆さん

●えびす座・舞台

(鐘の音)

千代:すっかり暮れてしもて。

一平:若子 わてと一緒に死んでくれへんか。

千代:本気だすのか?

一平:ああ わては本気や。このお酒の中には楽に死ねる毒が入ってる。一緒に飲んでくれへんか?

千代:分かりました。礼一郎さんとやったら喜んで死にます。

一平:ほんまか?死んでしもたら 何もかんものうなんのやで。

千代:礼一郎さんと一緒にいてはれへんようになんのやったら生きててもしょうがない。礼一郎さん 生まれ変わったら今度こそ一緒になりましょな。

(コップが落ちる音)

千代:けったいやなあ ちょっとも苦しいことあれへんわ。

一平:お前の気持ち よう分かった。よう分かった!わてら ずっと一緒や。お前をもう離さへんで!

(どよめき)

一平君 なんちゅうことを…。

(つづく)

●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。

関連記事

NHK連続テレビ小説・第103作【おちょやん】のネタバレあらすじと各回の全セリフ、そしてキャスト紹介を最終回まで書き続けています。朝ドラ【おちょやん】は女優・浪花千栄子さんをモデルに、その生涯を再構成してフィクションとして作られたド[…]