朝ドラ【おちょやん】第23週「今日もええ天気や」111話、物語は昭和27年(1952)2月、「初代桂春団治」が大ヒットし、インタビュー番組「私は演芸人」に出演するためにNHKのスタジオを訪れた一平。
その頃、ちょうど千代もNHKの会議室で読み合わせしており、2人が顔を合わせないように配慮する文芸課の面々だったが…。
当郎がラジオをつけてしまい、一平の声を約2年ぶりに聞くこととなった千代。
愚かで哀れな人間です。 けど そういう目ぇ覆いたなるようなことの先にこそ 本当の喜劇がある。そらい遠回りして ようやっとそのことに気ぃ付けました。私は喜劇なんかなくなる世界をつくるために 喜劇をやってるのかも分かりませんな。
一平のこの言葉を千代はどう感じたのか?いよいよ残り4話です。
【おちょやん】セリフ書き出し第23週111話
春子:お母ちゃんがいててくれてよかった。
千代:うちも春子がいててくれてよかった。
千代ちゃんは春子ちゃんとほんまの親子になりました。
千代:フフフ…。
そして そのころ…。
回想・寛治:覚悟決めたて言うんやったら かっこつけんと丸裸になれや。あんたが大事にしたいこと 目ぇそらしたいこと 灯子のこと新平のこと千代さんのこと みんな書かんかい!
昭和27年(1952)2月
●京都・栗子の家
春子:お母ちゃん お帰りなさい。
千代:ただいま。吉田さん いつもおおきに。春子 ええ子にしてましたんか。
吉田:ええ子やったで。それよりな あんたにお客さんやで。外で待ってもらうのもなんやし 上がってもろたんやけど…。
♪
熊田:久しぶりやな 千代。
(OP)
熊田:萩野堂の栗もなかやろ、
春子:栗もなか?
熊田:長浜屋の粟おこし。
春子:粟おこし?
千代:春子 お行儀悪ます。あんた 向こう行っときなはれ。宿題せなあきまへん。
熊田<すっかり お母ちゃんや>
千代:ラジオドラマと違て 現実は何や分かれへんことだらけで…。子育ていうのは いろいろと難儀なことだすな。
熊田:どこの親もそうやで。
千代:そないもんだすか?
熊田:フフフ…。一平もええお父ちゃんやってるわ。千代…。出てくれへんやろか 鶴亀新喜劇の舞台に。二度と道頓堀の舞台には出えへんつもりやろ。僕は戻ってきてほしい。もっぺん道頓堀の舞台に立った千代が見たい。竹井千代は道頓堀の舞台女優なんやて みんなに知ってもらいたいんや。鶴亀に入って40年…。これが…僕の最後の仕事やと思てる。やってくれへんやろか。どうせ見てへんやろ思てな 持ってきましたんや。よかったら読んでみたって。
一平君の書き上げたこの「桂春団治」は実在した初代桂春団治の破天荒な生涯を笑いあり涙ありで描いたお話です。
●新えびす座・舞台
(拍手)
桂春団治は後家殺しとあだ名されるほど 女性にモテる落語家でしたが 芸のためなら女房 娘 愛人するも泣かせる落語一筋のむちゃな男でございました。
寛治:2本でっか?えらいすんません!
一平:持って帰ったらあかんがな おい。
寛治:えっ?
一平:持ってきたもん 持って上がって それから取りに帰れ お前。
寛治:アハハッ。へえ 分かりました。
一平:もうええ はよ 口開け。
寛治:すんません。あ~。
(拍手と笑い声)
一平:お前の口と違うわ。瓶の口開け言うとんのや。
寛治:アハハッ。せやけど 師匠みたいな大看板なりはっても こんな小さい家で借金取りに追われてますやろ。そんなん ずっと見てましたさかい 嫌や。師匠が高座上がりはっただけでね ええぞ春団治!後家殺しや~い!
(拍手)
一平:酒。
寛治:へえ。
一平:ああ 待て。
♪
(泣き声)
香里:あんた この人の子 おなかに?
真由美:よつき。
(真由美の泣き声)
香里:もう よつき。
一平:月は合うてるな。
(笑い声)
香里:あんたのたった1人の子のため 父親になってあげなはれ。わてはいらん人間だす。芸人の女房に やきもちは禁物やなんて 嘘やったわ…。 やくべきとこはしっかりと やいとかな いかなんだ…。
(泣き声)
一平:おい。
(泣き声)
一平:晩ごはん食うてから行ったらどないや。お前に芸人の苦しさが分かるかい。
香里:師匠のあんたには 芸人の苦しさは分かっても 人間の苦しさが分かってへんのや。
一平:ほな わし 人間やない言うんか?
結局 春団治はその生涯 ただひたすら 芸の道を突き進んでいきました。
徳利:自分ががんやいうこと。
漆原:薄ぼんやりとは思ってはるんやろな。
徳利:えっ? ああ…。
(笑い声)
徳利:師匠! おい!
万歳:師匠…えっ…。
漆原:医者呼んで!
万歳:行ってきます!
(拍手)
一平:おい 力 どないしたんや。
天晴:あきまへん。カンフル注射してますさかい 前へ進ましまへん。
(笑い声)
わあ~!
どないしました?
あほ!
え~っ!?
えっ えっ…何や…。
(鐘の音)
天晴:師匠 あきまへんわ。制限時間いっぱいだすわ。
千兵衛:ご臨終です。
徳利:嘘やろ 師匠…。
一平:わしわな 皆の幸せを遠いとこから祈ってんで。力 やってくれ。
天晴:ようてんな~。
(拍手)
{桂春団治}は連日大入り 大盛況となりました。
●NHK大阪中央放送局・収録スタジオ
富岡:「女を征服しているつもりで実は女に負けていく 一落語家の人間像を掘り深く描いてみせる天海天海の劇作家としての力に脱帽」。 ベタ褒めやんか。
桜庭:東京公演も決まったいう噂ですわ。
酒井:まずいことになったわ。
富岡:どないしたんです?
酒井:夕方の番組で天海天海さんを呼んで インタビューすることが急きょ決まったて。
桜庭:天海さんが来はるんですか?
酒井:喜んでる場合か。今日は「お父さんはお人好し」の読み合わせもあるんやで。千代さんと天海天海が顔合わせてしまうかも分かれへんやないか。なんとか2人が接触せんように誘導するしかあれへんな。
桜庭:どないして?
酒井:えっ?
●NHK大阪中央放送局・会議室
千代:熱子 あんた 今になって気が変わったて そないなこと…。
当郎:何で気ぃ変わったんか言うてみい。
千代:聞かんかて よろしおます。もう しょうもない ささいなことで気ぃ変わったとか…。
酒井:どや?
桜庭:天海天海さんは今 スタジオに入られました。
酒井:よし 今のうちやな。
四ノ宮:はい。
熱子:しゃあないやあれへんの。
2人:あんたのせいですがな。
富岡:はい そこまで。
当郎:はい 今日はこの辺にしときましょ。
千代:長澤先生 ちょっと よろしますか?ここのセリフだすのやけど…。
長澤:ああ。
●NHK大阪中央放送局・収録スタジオ
林田:皆様 こんにちは。「私は演芸人」のお時間です。本日は鶴亀新喜劇 座長 天海天海さんに「初代桂春団治」の舞台裏など いろいろとお話を…。
●NHK大阪中央放送局・会議室
酒井:さあ 皆さんもそろそろ…。
長澤:いや 僕はそういうつもりで書いたんやないねんけどな~。
千代:せやけど その方がチヨ子らしいのと違いますやろか。
酒井:今日のところは 一旦持ち帰って…どないですか?
長澤:それでもええ?
千代:そうだすな。おおきに 先生。
長澤:はい ほな お疲れさま。
四ノ宮:お疲れさまでした。
千代:お疲れさんだす。
酒井:解散。
四ノ宮:はい。
酒井:今日は解散。
(ラジオをつける音)
(ラジオ・一平)「そうですな。あの台本書き上げるまで えらい時間かかりました。
当郎:何や ニュース終わってしもたんか。
(ラジオ・一平)「どうにかここまで来られたんは みんなに劇団のみんなが支えてくれたおかげです」。
●NHK大阪中央放送局・収録スタジオ
林田:この「桂春団治」で描こうとしたものは 何なんでしょうか?
一平:そない大層なもんやありません。ありのままの私自身です。
●NHK大阪中央放送局・会議室
(ラジオ・一平)「愚かで哀れな人間です。 けど そういう目ぇ覆いたなるようなことの先にこそ 本当の喜劇がある。そらい遠回りして ようやっとそのことに気ぃ付けました」。
●NHK大阪中央放送局・収録スタジオ
一平:私は喜劇なんかなくなる世界をつくるために 喜劇をやってるのかも分かりませんな。
●NHK大阪中央放送局・会議室
(ラジオ・林田)「ありがとうございました。今日は鶴亀新喜劇 座長 天海天海さんにお話をお伺いしました」。
●京都・栗子の家
春子:お母ちゃん 行ってきます。
千代:忘れ物あれへんか? ハンカチ持った?
春子:持った。
千代:宿題は?
春子:持った。全部やれへんかったけど。
千代:あかんやないの。
春子:どうせ分かれへんし。
千代:春子。
(鈴の音)
春子:おばあちゃん 行ってきます。
千代:慌ててケガせんよう 気ぃ付けますんやで。
春子:はい。
(戸が閉まる音)
(つづく)
●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
NHK連続テレビ小説・第103作【おちょやん】のネタバレあらすじと各回の全セリフ、そしてキャスト紹介を最終回まで書き続けています。朝ドラ【おちょやん】は女優・浪花千栄子さんをモデルに、その生涯を再構成してフィクションとして作られたド[…]