朝ドラ【おちょやん】第3週11話、大正13年秋の道頓堀、千代がこの街に来てからおよそ8年という月日が流れていた。
千代はお茶子として一人前に仕事をしながらも、仕事の合間に芝居をのぞき見する日々。
そしおて、まもなく数えで18歳。奉公が終わる年季明けが近づいていて、岡安の女将シズから、将来のことを問われて困惑する千代。
本当に自分がやりたいことは何なのか、生まれて初めて本気で考えるようになる千代の前に、あの憧れの女優・高城百合子が現れて、明日につづくです。
【おちょやん】第3週11話セリフ書き出し
●道頓堀・街中
大正13年秋の道頓堀です。千代ちゃんがこの街に来てからおよそ8年という月日が流れました。
千代:ごめんやっしゃ!ごめんやっしゃ!
街の人:千代ちゃん おはようさん。
千代:おはようさんでございます。
街の人:今日も精が出るな おちょやん。
千代:もう おちょやんちゃいます。
街の人:堪忍 堪忍。
千代:おはようさんでございます。
行商人:うおっ!すまん すまん!
千代:すんまへん!
(笑い声)
小次郎:相変わらず そそっかしいやっちゃ。
千代:小次郎さん 今日もお勤め ご苦労はんだす。
小次郎:嫌みかいな。わしは乞食やで。今日はまた一段と可愛らしなあ。
仲間:ほんまや。
千代:もう嫌やわ~。朝からそないほんまのこと言わんといて。
小次郎:今日は柴富の鰻が食いたいなあ。
千代:そう来る思たわ。お客さんのお弁 余ったら取っとくさかい 任しとき。
仲間:さすが 千代ちゃん。
千代:道頓堀の乞食は口が肥えてんなあ。ほな。
千代ちゃんも下働きのおちょぼを卒業して お茶子さんになったんやね。
千代:へえ!
いや千代ちゃん そない見つめんといて。まぶしいがな!
●えびず座
千代:おはようさんでございます。おはようさんでございます。お玉さん 残りのお座布 持ってきました。
玉:おおきに。
富士子:千代 お茶箱あと2つ。
千代:へえ。
玉:伊藤の旦さんは荻野堂の栗もなかで ご寮人さんは…。
千代:カステラだす。島田さんのご一行は森田のおかきと 奥山のほうじ茶。南原の大旦さんは はなからお酒やな。
椿:お客さんの好み覚えとくぐらい お茶子として当たり前のこっちゃ。
ぼたん:ほんまだすなあ。
千代:福富の椿さん ぼたんさん あやめさん おはようさんでございます。
椿:つい昨日まで読み書き一つでけへんかったのに 大したもんやなあ お ちょ やん。
(笑い声)
節子:福富さ~ん。あんまり てんご言わんといて。
椿:何が? うちは褒めたんや。なあ 千代やん。おちょやん。
3人:おちょやん。
(笑い声)
千代:アハハハハハハ!おおきに。あ~もう行かな。今日はお客さんがぎょうさん 8組40人かそこらは来はりますねん。福富さんは…。2升8人!? 楽でよろしなぁ 羨ましいこと。ほな 失礼します。
椿:バカにしてからに!
玉:うち 何も言うてへんのに~。
富士子:椿! いけずばっかり言うてたら えらい目に遭わすで!
8年経った今も老舗の芝居茶屋 岡安と福富のライバル関係は続いております。
●福富
菊:それで言われっ放しかいな。岡安だけには負けたらあかんていつも言うてるやろ!
福松:そない目くじら立てんと。岡安には福助と同級やったみつえちゃんもいてるんやし。なあ 福助。
(トランペットの音)
菊:やかましいわ 表でやり!
(トランペットの音)
菊:表に行き!
福助:ハハハハハ!
菊:あ~もう!
●岡安
一日中 お客さんのお世話をするお茶子たちが ゆっくり座って食事をする暇などありません。
かめ:お里!何べん言うたら覚えんねんな!今 お酒ぬくめたら 姐さんたちが食べ終える頃には冷めてしまうやろが!
里子:はい!
かめ:「はい」やのうて「へえ」!
里子:へえ!
♪
みつえ:この鯛 おいしいわあ。
宗助:みつえの大好きな荻野堂の栗もなかもあるさかい 後でよばれよな。
みつえ:お父ちゃん おおきに。
シズ:旦さん。いつも言うてますやろ。あんたは みつえを甘やかし過ぎだす!
宗助:また怒られてしもた。
ハナ:宗助さん。
宗助:はい すんまへん お義母さん。
ハナ:わての分も栗もなか あるやろか。
シズ:もう お母ちゃんまで!
ハナ:アハハハハ! 堪忍堪忍。アハハハハハハ!
改めて皆さんにご説明しておきますね。この岡安はハナさんと先代の旦那さんが本家の福富からのれん分けさしてもろたお店です。先代ははように亡うなってしもて ハナさんは女手一つで店を切り盛りして苦労しはりました。一人娘のシズさんは岡安を引き継ぐことを決心。お茶子として働きハナさんから厳しゅう仕込まれました。お客さんとして来はった宗助さんがそんなシズさんを見て一目ぼれ。お婿さんとして岡田の家に入り 岡安はシズさんと宗助さん夫婦に引き継がれたというわけなんです。
シズ:みつえ あんたも来年はもう女学校卒業する年になりますのやで。
みつえ:うちは お母ちゃんみたいにこの岡安の女将になります。
ハナ:ほうかほうか。女将になりたいてか。うんうん。フフフ。
●えびず座・舞台
役者:ほんまに斬りやがったな。
この8年 すっかり芝居好きになった千代ちゃんは 忙しい仕事の合間にようこないしてのぞき見してました。
延四郎:ええかげんに だだけさんせえ。言うてええことと悪いことがある。何でおやっさんを斬らねばならぬ。
千代:(小声で)しもた~。
延四郎:しもた~!舅殿 堪忍さらせ!
客:いずや! 2代目! 延四郎!
(拍手と歓声)
千代:いっ…! 熊田さん。
熊田:のぞき見はあかん言うて 何べんも何べんも何べんも何べんも何べんも言うてるやろ。
千代:よろしいやろ ちょっことくらい減るもんやなし。
熊田:あかん言うてるやろ 立て。しっ!はあ…どやった?今日の芝居は。
千代:まあまあだすな。中日過ぎて 役者さんら 何やちょっと手ぇ抜いてはるみたいで。
熊田:相変わらず偉そやなあ 自分。
千代:あっ けど あの早川延四郎いう役者さんだけは違う。芝居に血気迫るもんがあって。
熊田:やっぱり分かるか? この興行はあの早川延四郎 最後の舞台なんや。芝居から足洗て 国に帰るみたいやな。
(鐘の音)
延四郎:悪い人でも舅は親。親爺どん ゆるしてくだんせ。
客:いずや! いずや! 延四郎!
●岡安
伊藤の旦さん:これ少ないけどな。
玉:おおきに。
千代:おおきに。
伊藤の旦さん:あの早川延四郎の最後の芝居やさかいな まあ見といて損はないわ。ハッハッハ!女将もな。アハ…あかんあかん ついはしゃいでしもた。
シズ:お気遣いには及ばしまへん。
伊藤の旦さん:ほなら また寄らしてもらうよってな。
シズ:お待ち申し上げております。
千代と玉:おおきに ありがとさんでございました。
シズ:千代 ちょっと来なはれ。
千代:へえ。うち またなんぞ やらかしてしもたんやろか。
玉:お芝居のぞいてたん バレたんと違う?
♪
シズ:あんた どないするつもりだす?
千代:すんまへん。確かにお芝居のぞいてましたけど 油売ってたわけやのうて 何ちゅうか その…お客さんとの話を合わせるために…。
シズ:また のぞいてましたんか。
千代:へえ。あれ?
シズ:そないなことやのうて 年越したらあんたも数えで18の年になる。数えで18になったら年季明けいうのがうちの決まりだす。
年季明けいうのんは 要するに奉公せなあかん期間が終わるっちゅうことやね
シズ:そのあと あんた どないする?
千代:どないする言われても…。
シズ:お玉みたいに うちで働きたいのやったらそれでもええ。
千代:ほんまだすか?それやったら そないさしてもらいます。
シズ:あきまへん。
千代:えっ どっちだすのや?
シズ:自分がどないしたいか もっとよう考えはなれ。そうせな…後悔する。よろしいな。
●岡安・住み込み部屋
玉:姐さんたち 帰りはったわ。お風呂行こ。そない怒られたん?
千代:ううん そやない。
玉:はよ行かな 閉まってまうで。行こ さっちゃん。
♪
千代:お母ちゃん…。うちのやりたいことて 何やろ…。
千代ちゃんは生まれて初めて そんな当たり前のことを考えました。これまでは生きることだけで精いっぱいやったからなあ。
●えびず座
熊田:まだな 遠くへは行ってへんはずや。お前らはあっち。
千代:熊田はん どないぞした…。
熊田:おお 千代ちゃん。ああ ちょうどええとこに。あっちから来たんやろ。途中で会えへんかったか。
従業員:あきまへんて! それは それは…。
熊田:あ~…ハハハ 何でもあれへん。行くで。
千代:何やねん。
●道頓堀・川べり
千代:小次郎さん 今日の残りもん持ってきたで。
小次郎:いつもすまんなあ。おい みんな。
仲間:おおきに 千代ちゃん。
仲間:おお!今日は丸千の寿司やんか! こっちも こっちも。
(笑い声)
小次郎:あんたは いらんのか。
百合子:乞食に施しは受けない。
千代:何気取ってんの。あんたも乞食やんか。
百合子:違う!
千代:ああ~っ! 高城百合子! …さん。
それは紛れもなく かつて千代ちゃんが心を奪われたあの女優 高城百合子でした。
(つづく)
●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。