朝ドラ【おちょやん】第21週「竹井千代と申します」101話、昭和26年(1951)2月、千代が道頓堀から姿を消して1年。
その頃…NHK大阪の一室であるラジオドラマの企画が動き始めようとしていた。
タイトル「お父さんはお人好し」。脚本・長澤誠、主演は喜劇役者の花車当郎。
その相手役には、大女優の箕輪悦子が決まりかけていたが、 当郎が竹井千代がいいと主張し、行方不明の千代の捜索が行われ、京都に親子で住んでいることが判明。
今日の家には、あの栗子と春子という少女の姿も。その謎解きは明日に続くです。
【おちょやん】セリフ書き出し第21週101話
昭和26年(1951)2月
●うどん屋「岡福」
(笑い声)
客:お酒ときつねな。ほんでな きつねはな…。
シズ:できるだけ やわらこうな。
客:さすがやなあ。
シズ:いつもおおきに。
客:みつえちゃん ビール。
みつえ:は~い。お父ちゃん 頼むわ。
宗助:おお 任しとき。
千代ちゃんが道頓堀からいてへんようになって1年の月日が過ぎました。
みつえ:はい 親子丼だす。お待っとさん。
♪
客:ごちそうさん。
シズ:毎度おおきに。
客:おっ ええ月や、こら 明日も晴れやな。ほな。
シズ:お気を付けて。
●鶴亀株式会社・稽古場A
熊田:どや?来月の芝居は。
天晴:まあ 悪いことはおまへんな。
一平:客足は悪いまんまですわ。
事件の噂は劇団に暗い影を落としていました。
熊田:そらそうと 新平は大きなったやろ? もうなんぞしゃべったか?
万歳:何言うてはりますね まだ半年やのに しゃべれるはずありませんやん。
熊田:ハハハハ そらそやな。
天晴:何言うてますねん。
熊田:すまん すまん。
一平:ほな 今日はこれで。明日の稽古は11時からや。
寛治:お疲れさんです。
お疲れさんでした。
寛治:熊田さん。あれから千代さんのこと 何か分かりましたか?
熊田:どっかで芝居続けてたら 分かりそうなもんやけどな。
天晴:ほんまに辞めてしもたんやろか…役者。
●天海一平の家
<<(新平の泣き声)
灯子:新平…新平 ほら お母ちゃん ここにいてますで。よしよし。
一平:ああ どないしたんや?だんない だんない。
灯子:すんません。お仕事の手ぇ止めさしてしもて。
一平:ええのや。これでええ…。
(新平の泣き声)
●NHK大阪中央放送局・会議室
そのころ…NHK大阪の一室であるラジオドラマの企画が動き始めようとしておりました。
酒井:面白いですわ。
長澤:ありがとうございます。
酒井:いやあ 何と言うても このお父ちゃんとお母ちゃんの掛け合いがよろしいわ。
長澤:そこは こだわったとこや。箕輪悦子やったら それぐらいせんとな。
箕輪悦子さんいうのは 戦前から映画やラジオで大人気のベテラン女優さんです。
四ノ宮:彼女の出演は問題ないんでしょうね?
桜庭:えっ?
酒井:ああ…それはもちろん。「長澤先生の作品やったら是非に」と言うてはりますし。編成も箕輪悦子さんやったら文句なしですわな。
四ノ宮:もちろん。
当郎:いや 遅なってしもてほんま すんません。
酒井:お待ちしておりました。どうぞ どうぞ。
富岡:当郎さん 先週のラジオ漫談 腹抱えて笑わしてもらいました。
当郎:ハハ そら おおきに。先生 台本読ましてもらいました。いや~ やりがいありますなあ。
皆さん この人のこと 覚えてはりますか? 防空壕の中で千代ちゃんと丁々発止のやり取りを見せた漫才師の花車当郎さんです。
(回想)
千代:そういう あんたは次郎…次郎やな。
当郎:いや 誰や 次郎て。
千代:次郎は昔 飼うてたヒキガエルだす。
(笑い声)
当郎:ヒキガエル!
(回想閉じ)
当郎さん 今では映画 舞台 ラジオに引っ張りだこに喜劇役者として活躍してはります。
長澤:よかった~。当郎君にそない言うてもろて ほっとしましたわ。箕輪悦子との掛け合い 今から楽しみや。
当郎:箕輪悦子?
長澤:当郎さんとの夫婦役をね 彼女にお願いしようて ねえ 酒井さん。
酒井:ああ その件やったら 改めて当郎さんにはきちんと…。
富岡:箕輪悦子か…。役とはいえ あんなべっぴんさんと夫婦になれるやなんて羨ましい。
当郎:僕は反対ですわ。相手役は別の人がええて お願いしてましたんやけどな。
富岡:えっ? 酒井さん どういうことですか?
酒井:うん まあ そうなんやけどな…。
長澤:誰ですか? 別の人いうのは。
当郎:喜劇女優の竹井千代さんんです。
長澤:竹井 千代…?
四ノ宮:聞いたことないなあ。
長澤:確か 鶴亀新喜劇の女優さんやったな。座長の天海天海の元奥さんやろ。
当郎:長澤先生 ご存じなんですか?
長澤:うん 1年ぐらい前に ごたごたがあって別れたはずや。ほんで劇団も辞めてしもたて聞いたけど。
酒井:そ…そう…そうなんですわ。おい 桜庭。
桜庭:はい。酒井さんに言われて その竹井千代さんについて調べたんですが どこ行ったか誰も分かれへんそうで。
当郎:どういうこっちゃいな?
桜庭:つまり 行方不明です。
富岡:行方不明?
酒井:まあ そういうことなんで 当郎さん ここは箕輪悦子さんで…。
当郎:捜してんか。
酒井:えっ?
当郎:まだ引退したてことやあれへんのやろ。捜してくれへんやろか 竹井千代さんを。
富岡:当郎さんは 彼女とは どういう…。
当郎:一度だけ ほんのちょっと会うたことがあるだけや。
富岡:それだけですか?
当郎:確かに箕輪悦子はええ役者やと思います。知名度かて間違いのう上や。せやけど…それがあかんのですわ。箕輪悦子は何て言うか この…女優すぎますのや。先生の書きはったこの「お父さんはお人好し」に出てくる人らは みんなもっと普通や。僕も含めて身近な どこにでもいてるような人がやるべきなんや。竹井千代という役者にはそういう親しみやすさを感じた。初めて会うたのに 何て言うか この昔っから気心知れた仲のような それでいて油断したら こっちがのまれてしまうようなすごみもあった。僕は彼女のことずっと気になってるんですわ。あない…あないに楽しい時間は久々やった。長々としゃべってしまいましたけどな 言いたいことは一つ 僕は竹井千代とやりたいんですわ。
四ノ宮:いやあ やっぱり ここは箕輪さんの方が…。
長澤:君の考えはよう分かった。せやけど僕も妥協するつもりはない。戦争で失われてしもた家族の団らんを取り戻したい。そないな思いをこの作品に込めたつもりや。一人でも多くの人ひ聴いてもらいたい。そんぼためやったらちょっとでも知名度の高い役者を選ぶのは当然やろ。
酒井:あ…ほな 今日のところは え~っと…。
●NHK大阪中央放送局・制作部
富岡:どないします?
酒井:そら 当郎さんに折れてもらうしかあれへん。竹井千代は行方不明なんやから。
富岡:よかったですなあ 行方不明で。
酒井:ほんまや。
桜庭:あの 酒井さん。
酒井:桜庭 ちゃんと竹井千代のこと捜すんやで。捜したけど見つかれへんかったって言わな 当郎さんかて納得せえへんさかいな。
桜庭:はい 手抜きなんかしてません。
酒井:そら ええこっちゃ。
桜庭:おかげで 見つかりました。
酒井:そうか そら何より。何ぃ…何ぃ!?
富岡:桜庭「何?」言うてはる。
桜庭:あっ 道頓堀の知り合いやら 同期のお芝居好きの連中に片っ端から聞いて回って その中の一人からたった今 連絡があって…。竹井千代さん 京都で見かけたて。
富岡:京都?
桜庭:何でも親子で暮らしてるんやないかて。
酒井:親子?
桜庭:明日にでも調べてきます。
酒井:いや…その必要はあれへん。見つかれへんかったことにしよう。長澤先生と当郎さんがこのまま仲たがいしてみい この企画は吹っ飛ぶで。
富岡:せやな。それだけは避けなあかん。
その3日後。
●NHK大阪中央放送局・会議室
当郎:どないです?竹井千代の居場所 分かりましたか?
桜庭:すんません 見つかりませんでした。
当郎:ほんまによう捜してくれはったんかいな?
桜庭:も…もちろんです。
四ノ宮:いや いいじゃないですか。やっぱりここは箕輪悦子でいきましょうよ。
酒井:当郎さん もう時間あれへんのです。
長澤:彼女のことをよう知らんままで反対するのも不公平や。私なりに道頓堀で竹井千代のこと聞いてきた。
当郎:先生…。
長澤:長年連れ添うた天海天海と若い劇団員の間に子供ができて離縁したというのはほんまの話やった。
富岡:そら 逃げ出しとうもなるわな。ほんまに死にたなっても おかしいことありません。
長澤:私もそない思たんやけどな…。
回想・香里:あの千代役者辞めれるはずあれへんわな。
長澤:彼女を知る人は皆 口そろえてこない言うてた。そないなことで死ぬねやったら 彼女はもうとっくに10回は死んでるて。どないな人生やったんや…。私も竹井千代に会うてみたなった。そういうことやから 酒井さん もうちょっとだけ彼女を捜してみてもらわれへんやろか?
酒井:お任せください。この酒井がすぐにでも見つけてご覧に入れます。
●京都・栗子の家
近所の子供:お母ちゃん 行ってきます。
近所のお母さん:行っといで。こけなや。
千代:おはようさんでございます。
近所のお母さん:おはようさん。
千代:せかな遅刻しますで。
春子:待って。
♪~(三味線)
千代:忘れ物あれへんな。
春子:うん。
千代:ほな 栗子さん 行ってきます。
春子:行ってきます。
栗子:行っといで。気ぃ付けてな。
春子:千代おばちゃん はよう。
千代:は~い。春ちゃん こけるで 気ぃ付けや。
春子:だんない。
近所のおばちゃん:おはようさん。
千代:おはようさんでございます。
近所のおっちゃん:おはようさん。
千代:おはようさんでございます。
春子:はよう。
千代:ちょっと待ってえな。
(つづく)
●このセリフ書き出しは、聴覚に障がいのある方や日本語を勉強されている方々等の要望に基づいて行っております。
●字幕を追って書いておりますが100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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